計画研究
ユビキチンシグナルの全貌解明を目的とし、以下の解析を行った。1. 質量分析によるユビキチン鎖の識別定量法の確立:これまでQ-Q-Orbitrap型質量分析計を用いたPRM(Parallel Reaction Monitoring)法により、全てのユビキチンリンケージを超微量(100 amol)から絶対定量する系を確立し、領域内で見出された重要な基質のユビキチン鎖情報を得てきた。本年度はユビキチンリガーゼUBE3Cが形成するユビキチン鎖、カベオリンに付加するユビキチン鎖等の解析に成功した。一方、領域内で見出されたアセチル化ユビキチン、リン酸化ユビキチンについて、すべての部位に対応したAQUAペプチドを作製し、PRM法による絶対定量法を確立した。2.ポリユビキチン鎖長決定法の開発:これまで、基質に付加したユビキチン鎖長を決定する新手法Ub-ProT(ubiquitin chain-protection from trypsinization)法を開発してきたが、本年度はEGF受容体に付加するユビキチン鎖に応用し、EGF受容体にはEGF刺激時、平均4~6-merのK63鎖が付加されることが明らかとなった。3.ユビキチン結合タンパク質の網羅的解析:ユビキチン修飾系のデコーダー分子であるユビキチン結合タンパク質が細胞内で相互作用するユビキチン鎖を網羅的に定量解析することで、細胞内のユビキチン鎖の使い分けを明らかにした。その結果、プロテアソームによるユビキチン化タンパク質の分解経路は、細胞内ではCdc48/p97/VCPとRad23を介したものが主要経路であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ユビキチン鎖およびユビキチンの翻訳後修飾の絶対定量法、ユビキチン鎖長決定法、ユビキチン化基質の網羅的同定法を確立し、領域内における共同研究に発展させている。また、以前より検討していたホルマリン固定サンプルを用いた質量分析解析に成功しつつあり、現在、ユビキチン結合タンパク質やユビキチンリガーゼの基質探索などの応用を試みている。
計画通り、以下の研究を推進する。平成27年度に引き続き、質量分析計によるポリユビキチン鎖絶対定量法、修飾ユビキチンの絶対定量法、ユビキチン鎖の鎖長決定法を領域内の重要分子に応用する。また、Middle-down質量分析解析による分岐型ユビキチン鎖の検出・定量法の開発、ユビキチン化基質の網羅的同定法の改良を進め、領域内研究に発展させる。一方、主要なユビキチン結合タンパク質20種類についてはコドン最適化コンストラクトにより大腸菌発現系が容易となったため、各ポリユビキチン鎖(K48鎖、K63鎖、M1鎖)やリン酸化ユビキチン・アセチル化ユビキチンとの直接結合を試験管内で評価する。これらの解析結果を統合することで、ユビキチンシグナル発動のメカニズムを明らかにし、各パスウェイにおけるユビキチン修飾の使い分け、すなわちユビキチンネットワークのドラフトマップを作出する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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