研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
24112009
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
水島 恒裕 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (90362269)
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研究分担者 |
加藤 龍一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (50240833)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | タンパク質 / ユビキチン / 構造生物学 / 分子認識 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
ユビキチンによる翻訳後修飾は、多彩な生命現象の制御において中核的な役割を果たしており、ユビキチン鎖による修飾は遺伝情報を飛躍的に増幅している。ユビキチン修飾による生命現象の調節はユビキチン鎖を認識する識別タンパク質、合成を行うユビキチンリガーゼ、除去の役割を担う脱ユビキチン化酵素に加え、多様な連結様式によりタンパク質機能を調節するユビキチン鎖により行われており、その反応機構を理解することを目指し、これらタンパク質の構造解析を行った。赤痢菌のエフェクタータンパク質OspIはK63鎖ユビキチン修飾により制御されるタンパク質TRAF6の機能を阻害するため、K63鎖の形成に必須なユビキチン結合酵素Ubc13の脱アミド化を行っている。そして、OspIによる脱アミド化反応により赤痢菌は宿主の炎症シグナル経路を阻害している。OspIによるUbc13の認識機構およびOspIの反応機構の解明を目指し、OspIとUbc13複合体、OspIの活性部位変異体のX線結晶構造解析を行った。この結果、OspIの活性部位変異体構造から酵素の活性化に伴う立体構造変化を示した。また、OspI-Ubc13複合体構造解析および構造をもとに行った変異体解析によりOspIは電荷を持った分子表面と疎水性の分子表面でUbc13と結合しており、これによりユビキチン結合酵素の中から特異的にUbc13を阻害する機構を獲得していることを示した。さらに、同じ研究班内においてユビキチンの関与する生命現象の分子機構の解明について議論し、X線結晶構造解析を目指した共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユビキチン鎖により制御された炎症シグナル経路を標的とした赤痢菌の感染戦略を、それに関わる酵素を複合体状態で構造解析することにより、赤痢菌タンパク質が特異的に宿主タンパク質を認識する機構を明らかにした。また、多様なシグナルとして働くユビキチン鎖を認識するユビキチン結合タンパク質、合成を行うユビキチンリガーゼや脱ユビキチン化酵素など、当初計画したユビキチン経路に関わるタンパク質群の構造解析を目指し、発現系構築を行った。 さらに領域内において複数の共同研究を開始し、ユビキチン鎖の関わる生命現象の構造学的な理解に向けた研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は多様な連結様式によりタンパク質機能を調節する、ユビキチン鎖に関わるタンパク質群を、構造生物学的手法を用いて解析することにより、ユビキチン修飾により制御された生命現象の反応機構の理解を目指すものである。 これまでの研究により、ユビキチン修飾経路を阻害する赤痢菌エフェクタータンパク質OspIとユビキチン結合酵素Ub13の複合体構造を決定していることから、それらをもとにした機能解析、本経路に関連する他のタンパク質の構造および機能解析を進め、赤痢菌エフェクタータンパク質により引き起こされる阻害機構の解析を進める。 また、領域内の共同研究により複数種類のユビキチンリガーゼ、ユビキチン結合タンパク質、脱ユビキチン化酵素の発現系構築に取り組んでおり、構造解析に適した条件を決定するため、標的タンパク質の機能領域の特定、高発現条件の決定、精製系の構築を共同で進め、構造解析を目指す。 これらの研究課題に加え、本領域に新たに参加する公募研究者との共同研究や構造解析研究の支援を積極的に行い本領域の発展を目指す計画である。
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