計画研究
ユビキチン鎖により制御される様々な生命現象の反応機構を構造生物学的な手法を用いて解析した。1. ユビキチン鎖の形成に関わるユビキチンリガーゼの研究では、糖タンパク質の糖鎖を認識しユビキチンを付加する、Fbs1とアミノ酸配列相同性が52%であるにもかかわらず、異なる役割を担うFBG3の結晶構造を2.6Å分解能で決定し、構造的特徴を明らかにした。さらに、糖鎖認識に必要なループを交換することで、FBG3に糖タンパク質結合機能を付与し、立体構造と分子機能の関係に関する知見を得た。また、酸化ストレス応答に関わるユビキチンリガーゼKeap1の基質認識ドメインと阻害剤との複合体の構造解析を行った。2. 脱ユビキチン化酵素の研究では、クッシング病の原因となるUSP8と、その活性を制御する14-3-3タンパク質の結晶化に成功した。3. ユビキチン系を制御する病原性細菌エフェクタータンパク質の研究では、ユビキチンリガーゼ活性を有する赤痢菌タンパク質IpaH9.8の基質認識領域の構造解析を行った。4. その他、ユビキチン系に関する研究ではTail-anchored(TA)タンパク質の品質管理機構で中心的な役割を果たすと考えられるBAG6タンパク質とユビキチン相同タンパク質であるUbl4aの複合体の結晶構造解析、溶液中での親和性測定、変異体実験より、これら複合体の分子機構を明らかにすると共に、細胞内における相互作用の重要性を示した。また、BAG6の別の領域について研究を行い、その領域が1次配列上でユビキチンに似ているだけでなく、新しいドメインを形成していることを見出した。さらに、5. 国際共同研究により、ユビキチン識別タンパク質であるWRNIP1とユビキチンとの複合体のX線結晶構造を明らかにし、その結合様式が今まで知られていたUBZのものとは異なる新奇なものであることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
ユビキチン修飾経路に関わる、ユビキチンリガーゼSkp1-FBG3複合体、IpaH9.8基質認識ドメイン、ユビキチン識別タンパク質WRNIP1など複数のタンパク質の結晶構造解析を中心とした構造および機能解析を行い、その成果を論文として報告した。また、領域内において多くの共同研究を行い、関連するタンパク質の精製、結晶化、モデル解析などを行い、本領域研究を推進する成果が得られている。さらに、立体構造未知なユビキチンリガーゼの構造解析にも成功しており、論文発表の期待できる成果が得られている。
ユビキチン修飾経路を制御するタンパク質群の構造生物学的手法を用いた解析は計画通りに進行しており、また、領域内共同研究も積極的に進めている。そのため、今後の研究においても、これまでの内容を継続して行う計画である。ユビキチンリガーゼの研究ではKeap1、Ucc1、TRIMファミリーの結晶化、構造解析を進め、その反応機構の解析を行う。また、BAG6と相互作用するタンパク質について、その複合体解析を進めることでBAG6の果たす役割を明らかにすることを目指す。さらに、脱ユビキチン化酵素研究ではUSP8と14-3-3複合体の構造解析や活性中心とは異なる場所にUIMを持つ、脱ユビキチン化酵素のUIMとユビキチンの複合体のX線結晶構造解析を進め、ユビキチン認識の分子機構および、酵素の作用機作を明らかする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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