研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
24113002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
月田 早智子 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00188517)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | シリア / 中心体 / 基底小体 / Odf2変異マウス / 気管多繊毛上皮 |
研究実績の概要 |
一次繊毛形成過程において中心体が細胞膜にターゲットするとき、基底小体に形を変えて機能する。一次繊毛の形成異常に基底小体の機能不全が病因として重要であることが示唆されている。本研究では、私共の研究室で作製したOdf2変異マウスや培養細胞を用いて、基底小体・中心体の局在や機能における重要性が示唆されるアペンデージ構造体に特に注目した解析を進めている。これまで不明瞭であった2種のアペンデージ構造体の相違点に注目して、(1)新規Odf2関連アペンデージタンパク質の同定とその動的機能解析、(2)中心体が基底小体アンカリング繊維を介してアピカル細胞膜にターゲットする時の分子基盤と制御機構、(3)ベーサルフットを介した基底小体(中心体)・微小管/アクチン等細胞骨格複合体の構築が確立される分子基盤及びその制御における細胞接着の役割、についての理解を目指し、本年度では、特に以下の進捗を得た。 1、新規Odf2関連基底小体アペンデージ関連蛋白質の同定・解析を進めた。複数のOdf2/基底小体/微小管との結合における機能的重要性や、基底小体の配向・整列・アピカル膜へのターゲティングにおける役割の解析を進めている。さらに、細胞増殖期には核内に局在する、基底小体のDistal Appendagesに結合する蛋白質を見出しており、細胞周期制御におけるこれらの蛋白質の機能解析を進めてきた。 2、Odf2変異マウスおよびノックアウトマウスおよびノックアウト細胞を用いた系において、Odf2の生体および細胞レベルでの機能解析を進めた。Odf2変異マウスでは、Odf2の細胞アピカル膜へのドッキング、分子ドメインの機能、PCPにおける役割などの構造機能連関の解析をさらに進めた。Odf2のノックアウトF9培養細胞系により、細胞レベルでの機能解析を進めた。 中心体/基底小体アペンデージの微小管/アクチン等細胞骨格複合体における役割を分子レベルで解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、新規Odf2関連基底小体アペンデージタンパク質の探索:昨年度に引き続きデータベース解析も利用し、繊毛の根元となり、繊毛の軸糸が慎重を始める基底小体のアペンデージに局在するOdf2タンパク質に結合し、タンパク質複合体をつくる一連のタンパク質を解析進め、distal appendage proteins(DIPs)のタンパク構成を明らかにしつつある。特に、SIMなど解像度の高い顕微鏡を用いてのタンパク質間の配置の検討など、新規性を取り込むことで、生化学的な解析をサポートする視覚的なデータの取得は、非常にサポーティブに作用している。2、Odf2ノックアウト細胞および各種Odf2変異遺伝子を発現させた細胞によるOdf2の基底小体/中心体における機能の探索:Odf2変異マウスでみられたSubdistal appendageとDistal Appendageの形成異常について、Odf2変異体発現細胞を用いた解析を進めてきた。本解析の結果、Odf2Ex4,5相当タンパク質ドメインは、ベーサルフットの形成には不可欠であるなどをこれまでに明らかにしてきた。本解析には、さらに電子顕微鏡を用いたOdf2変異中心体の解析などを加えてきた。3、また上皮細胞のアピカル面にある中間径繊維や微小管などの細胞骨格を超高圧電子顕微鏡トモグラフィーにより観察し、基底小体と細胞骨格の走行について、固定サンプルで、観察した。本解析により、これまでに十分に理解されていない、複雑なアピカルの細胞骨格のネットワークを垣間みることが可能となってきた。基底小体のアピカル膜へのターゲッティングについても、詳細な観察を進めるとともに、今後、上皮細胞のアピコベーサル方向で走行する微小管等の細胞骨格と、基底小体の関係についても、解析と理解を深める。
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今後の研究の推進方策 |
1、新規Odf2関連基底小体アペンデージタンパク質の探索:本項目については、複数の候補タンパク質を得ているので、引き続き、免疫沈降実験、遺伝子発現安定株細胞の取得、SIM超解像顕微鏡を用いた蛍光染色像の取得など、により、複合体の分子実態を明らかにしていく。特に、Odf2が基底小体複合体構築のどのような階層に存在するのか、また、Appendageの構築異常が、細胞の機能にどのように影響しているのか、について、さらに検討を進める。超高圧電顕トモグラフィーは、本新学術領域解析を通じて、非常に重要になった解析手法であり、複雑な構造体としての中心体/基底小体の3次元構造の理解の上で欠かせない手法なので、さらに発展させる。2、Odf2ノックアウト細胞および各種Odf2変異遺伝子を発現させた細胞によるOdf2の基底小体/中心体における機能の探索:本項目については、中心体におけるSubdistal appendage(SA)とDistal Appendage(DA)の形成異常について、Odf2変異体発現細胞を用いた解析を進めてきたが、関連する解析で発展させてきた電子顕微鏡解析、高解像度顕微鏡の使用などにより、基底小体(中心体)とアクチン等細胞骨格複合体の構築が確立される分子基盤についての理解を目指した解析をさらに進める。3、超高圧電子顕微鏡トモグラフィーなど、大阪大学で研究可能なメリットを生かした解析により、通常では見出すことが困難なアピカル細胞骨格の3次元構造と基底小体との関係を、詳細に解析する。同時に、中心体および基底小体の微細構造の異同、発生過程における細胞骨格の成熟や基底小体との相互関係についても、解析を進めたい。
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