中心体は、一次シリア形成過程において細胞膜にターゲットするとき、一次シリアの土台となる基底小体に形を変えて機能する。また、一次シリアの形成異常は、病因として重要であることが示唆されている。本研究では、こうした背景を踏まえて、基底小体-中心体系と細胞膜・細胞骨格系との相互作用について、基底小体-中心体のアペンデージ構造体に特に注目して解析を進める。 本研究では、中心体に付随する2種類の中心体アペンデージ構造体の相違点に注目し、次のような解析を進めた。 (1) 新規Odf2関連アペンデージ蛋白質の機能、(2) 中心体がDistal Appendage (DA) を介して細胞膜にターゲットするときの分子基盤と制御機構、(3) Subdistal Appendate (SA) を介した中心体・基底小体と、微小管・アクチンなど細胞骨格との複合体形成の分子基盤およびその制御における細胞接着の役割、などを解析した。 平成28年度には、生化学およびデータベース解析から、中心体のSAの構築上重要な因子Cep128を新たに同定した。本タンパク質は、私共がこれまでに同定・解析を進めてきたOdf2タンパク質と結合し、SAを構築する。超解像顕微鏡SIMを用いた解析から、Odf2-Cep128の順に、それらが中心体の中心から外側に向かって層状の階層性をもって局在すること、が明らかになった。 また、Cep128の機能解析から、Cep128欠損細胞では、1次繊毛が形成されない条件下で細胞周期が停止する。1次繊毛形成が細胞周期の停止に必須である、という、今までの見解と異なる結果が得られた。このような、中心体の細胞周期制御における役割についての新規所見は、細胞周期の新規制御機構を明らかにし、がんの治療に関する新規理論基盤にもつながるものと期待される。
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