研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
24113003
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
北川 大樹 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任准教授 (80605725)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 中心小体 / 中心体 / 細胞分裂 / 微小管形成中心 / 染色体不安定化 |
研究実績の概要 |
中心小体の複製はその基底部にあたるカートホイール構造から始まる。これまで、中心小体複製に必須の蛋白質であるHsSAS-6が自己会合することで、カートホイール構造の中心部分が構築されるモデルを提唱してきた。しかし、in vitroの系ではHsSAS-6単独では自己会合の効率が十分ではないこと、同様に中心小体に初期過程に必須の役割を果たすPlk4, Cep152, STILなどがHsSAS-6の中心小体局在に必須であることから、上流カスケードに位置する因子群が相互作用することでカートホイール構造が形成されやすい環境を整えている可能性が考えられた。これまでの解析から、Plk4がSTILと結合しリン酸化することで、リン酸化されたSTILがHsSAS-6と結合し複合体を形成することで中心小体構築が開始される分子機構を明らかにした(Ohta et al. Nat Commu)。さらに各因子の精製蛋白質を用いることで、この過程を in vitroで再現することに成功している。さらに、この過程でカートホイール構造が構築され始めるのと同時に、Plk4の中心小体における局在が一カ所に限局されるというnegative-feedback機構を見出した。このモデルによって、母中心小体の根本で新たに複製される娘中心小体の数が一つに限定されるメカニズムが説明しうると考えている。すなわち、中心小体が新たに形成されることを感知すると同時に、他の中心小体ができないように阻止するというnegative-feedback機構が中心小体のone on one ruleを保障していると考える事が可能である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中心小体形成の初期過程の分子機構、特に必須因子であるPlk4/STIL/HsSAS-6の分子間相互作用に関する理解が期待以上に進み、一連の結果をNat Commu誌に掲載することを達成した。また、これら3因子の物理的結合の詳細の理解が進むとともに、精製タンパク質を用いた複合体の再構成を行うことに成功している。これらの成果は、中心小体初期の前駆体の構造生物学的解析を可能とするものである。以上のように、中心小体形成初期過程の分子機構の解明に向けて本研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
1. in vitro再構成による中心小体構築のモデリング 1) 電子顕微鏡画像を用いた3次元構造モデリングによるHsSAS-6高次複合体の解析: HsSAS-6高次複合体の電子顕微鏡画像を数千程度収集し、Emanなどのソフトウェアを用いて平均画像を3Dでモデリングし、その詳細な構造を~5 nm程度の解像度で予測する。相補的なアプローチとして、HsSAS-6高次複合体の3次元構造をクライオ電顕により解析する。さらに精製したPlk4/STIL/HsSAS-6 を用いてin vitroで複合体を形成させ、HsSAS-6高次複合体に対して構造上与える影響を検討する。特徴的なカートホイール構造の各部位の形、サイズなどを指標に得られた蛋白質複合体の構造を比較検討し、カートホイール構造の形成過程をin vitroで再現する。 2) HsSAS-6複合体の定量的解析: 1)から得られる情報は立体構造であり、そこに含まれる構成因子の正確な分子数、動的な複合体の場合には分子間の結合の強さなど定量的な分析が求められる。そこで、等温滴定型カロリーメーター(ITC)によりカートホイール構成因子間の結合定数や結合分子数比を算出し、カートホイール構造形成の定量的な理解を目指す。
2. 新規中心小体のコピー数が一つに限定される原理の解明: 新規に複製される中心小体の数を制御する重要因子であるPlk4/STIL/HsSAS-6の細胞内における動態観察、定量的イメージプロセッシング、シミュレーション、数理モデルを統合的に導入することで、母中心小体に対して複製される娘中心小体の数が一つに限定される理論の構築を目指す。
|