計画研究
これまでにハエのAna1が中心小体形成に重要であることが示唆されていましたが、その詳細な機能やヒトを含む脊椎動物でのホモログは知られていませんでした。バイオインフォマティクスを駆使した解析により、Ana1のアミノ酸配列から二次構造を予測し、1つ1つの二次構造情報をもとにBlastによって解析し、他種に存在するホモログの候補を選定しました。この結果により、Ana1のヒトでのホモログはCep295である可能性が強く示唆されたため、Cep295の中心小体形成における機能に注目し解析を行いました。RNAi法を用いてCep295をヒト培養細胞内で発現抑制し、中心小体マーカー分子の挙動を共焦点顕微鏡により観察しました。その結果、Cep295を発現抑制した細胞では、中心小体の数が著しく減少し、単極紡錘体の形成が顕著でした。これらの結果はCep295が新規の中心小体形成必須因子であることを示しています。次に、Cep295の中心小体形成経路への影響を検討しました。Cep192は、中心小体形成経路の最上流因子であり、微小管形成中心能の獲得に必須であることが認められていました。Cep295を発現抑制した細胞では、Cep192が娘中心小体に局在できず娘中心小体の成熟過程が著しく阻害される様子が観察されました。加えて、この未熟な中心小体は母中心小体としての性質、すなわち微小管形成中心としての機能や中心小体複製能力が完全に失われていることがわかりました。また超解像顕微鏡を用いて中心小体の微細な構造を観察すると、Cep295は中心小体形成の比較的早い段階でCep192が局在するための足場のような構造体を形成している様子が確認されました。これらの結果はCep295がCep192の上流で作用していることを強く示唆しています。以上の一連の結果をとりまとめ、国際科学雑誌に論文として掲載しました。
1: 当初の計画以上に進展している
ヒト中心小体構成因子群のフェノーム解析から得られた結果から、中心小体成熟に必要な、進化的に保存された因子Cep295を同定し、その詳細な機能を明らかにすることができた。また、中心小体構造の構築原理に関してもlipid-Monolayer法を導入することで、HsSAS-6の自己重合過程を再現することに成功している。中心小体前駆体構成因子の選定は行われており、HsSAS-6高次複合体を核とする、他因子を含む再構成実験を行う条件検討がほぼ終了し、構築過程の観察に専念できる段階にきている。
これまでに得られた結果をベースに精製タンパク質を用いた中心小体前駆体、特にカートホイール構造の再構成実験を行う。また、構造体の形成と中心小体の複製数を制限する分子機構がどのように密接に関連しているかの細胞生物学、構造生物学的解析を最終年度に精力的に進める。さらに、これまで得られた中心小体複製の制御機構に関しての一連の結果を複数の論文に鋭意取りまとめる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Nature Communications
巻: 7 ページ: 12567
doi: 10.1038/ncomms12567
Current Biology
巻: 26 ページ: 1127-1137
doi: 10.1016/j.cub.2016.03.055.