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2015 年度 実績報告書

中心体・一次シリアと細胞周期

計画研究

研究領域シリア・中心体系による生体情報フローの制御
研究課題/領域番号 24113005
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

稲垣 昌樹  愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, 部長 (30183007)

研究分担者 五島 直樹  国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 主任研究員 (70215482)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワード中心体 / 一次シリア / 細胞周期
研究実績の概要

本研究課題では、シリア・中心体系を経由した細胞内外からの情報フローが、細胞周期チェックポイントをどのようにに制御しているか、その分子機構を明らかにすることを主目的としている。
これまでの研究で、一次シリアの形成抑制因子としてトリコプレイン(Trichoplein)を同定し、一次繊毛の形成には、トリコプレインのタンパク質分解が必要不可欠であることを示してきた。さらに、その分子機構として、トリコプレインはユビキチン化E3リガーゼであるCRL3-KCTD17によってポリユビキチン化され、プロテアソーム依存的に分解されることを報告明してきた。我々は今回、新たな一次シリア抑制因子としてNdel1(Nuclear distribution element-like 1)を同定し、Ndel1がCRL3-KCTD17によるトリコプレインの分解を阻害することで一次シリアを抑制する分子機構をを見出した。Ndel1低形質マウスでは一次シリアの異常による病態(肥満、腎異常)を示しており、Ndel1が生理的なシリア制御にも必須であることを証明した。
さらに我々は、増殖細胞に一次シリアが形成されるとG0期停止を引き起こすことを明らかにしてきた。そこで、一次シリアから発信される増殖停止シグナルについて解析したところ、Cdk阻害因子であるp27 Kip1が一次シリアの形成依存的にタンパク質レベルで亢進することを見出し報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究で、増殖細胞で一次シリアの形成を抑制するメカニズムとして、中心小体におけるトリコプレインによるAurora Aキナーゼ活性化を発見した。さらに、増殖停止に伴う一次シリアの形成メカニズムとして、ユビキチン・プロテアソーム系(CRL3-KCTD17 ユビキチンE3リガーゼ)によるトリコプレインの分解を明らかにし、さらに上流で働く制御因子としてNdel1が発見され、一次シリアの形成を制御する分子基盤が着々と明らかになっている。現在、さらに脱ユビキチン化酵素による一次シリアの制御機構にアプローチしているが、既にトリコプレインの脱ユビキチン化酵素を同定することに成功している。この脱ユビキチン化酵素は、増殖シグナル依存のリン酸化によって活性制御されることも見出しており、さらなる解析により一次シリアと細胞周期チェックポイントの分子基盤の解明につながると期待できる。
また、一次シリアの形成がどのように細胞周期チェックポイント(G0期停止)を誘導するかの問題についても、Cdk阻害因子のp27 Kip1の発現レベル亢進を見出しており、今後の解析による進展が期待できる。
以上の理由より、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策として、脱ユビキチン化酵素によるトリコプレインの安定化メカニズムを詳細に解析することで、増殖シグナルによる一次シリアの抑制機構を明らかにする。既に同定したいる脱ユビキチン化酵素は、受容体型チロシンキナーゼによってリン酸化され活性化されることを予備データとして得ている。今後、リン酸化部位を同定し、リン酸化による制御をin vitro及びin vivoで詳細に解析することでトリコプレインを中核としたシリア制御機構の全容解明を目指す。
また、一次シリアが誘導するG0期停止機構の一因としてCdk阻害因子p27 Kip1の発現亢進を見出しているので、この分子機構も明らかにしていく。p27 Kip1のタンパク質レベルは主に分解機構により制御されることが報告されている。そこで、p27 Kip1のユビキチン化E3リガーゼであるKPC、Pirh2、Skp2などに着目して一次シリア形成の際に不活性化されるE3リガーゼを同定して、その不活性化機構にアプローチする。この方法で難航する場合を想定し、増殖条件にも関わらず人為的に一次シリアを形成させた細胞とコントロール細胞で、発現レベルに差があるタンパク質をDNAマイクロアレイなどで探索し、G0期停止の原因となる因子を同定する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Ndel1 suppresses ciliogenesis in proliferating cells by regulating the trichoplein-Aurora A pathway2016

    • 著者名/発表者名
      Inaba H, Goto H, Kasahara K, Kumamoto K, Yonemura S, Inoko A, Yamano S, Wanibuchi H, He D, Goshima N, Kiyono T, Hirotsune S, Inagaki M.
    • 雑誌名

      The Journal of Cell Biology

      巻: 212 ページ: 409-423

    • DOI

      10.1083/jcb.201507046.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Phospho-Specific Antibody Probes of Intermediate Filament Proteins2016

    • 著者名/発表者名
      Goto H, Tanaka H, Kasahara K, Inagaki M.
    • 雑誌名

      Methods in Enzymology

      巻: 568 ページ: 85-111

    • DOI

      10.1016/bs.mie.2015.07.010.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Current topics of functional links between primary cilia and cell cycle.2015

    • 著者名/発表者名
      Izawa I, Goto H, Kasahara K, Inagaki M.
    • 雑誌名

      Cilia

      巻: 4 ページ: 12

    • DOI

      10.1186/s13630-015-0021-1.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Vimentin Phosphorylation Underlies Myofibroblast Sensitivity to Withaferin A In Vitro and during Corneal Fibrosis2015

    • 著者名/発表者名
      Bargagna-Mohan P, Lei L, Thompson A, Shaw C, Kasahara K, Inagaki M, Mohan R.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10 ページ: e0133399

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0133399

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Sphingolipids inhibit vimentin-dependent cell migration2015

    • 著者名/発表者名
      Hyder CL, Kemppainen K, Isoniemi KO, Imanishi SY, Goto H, Inagaki M, Fazeli E, Eriksson JE, Tornquist K
    • 雑誌名

      The Journal of Cell Science

      巻: 128 ページ: 2057-2069

    • DOI

      10.1242/jcs.160341.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Cytokinetic Failure-induced Tetraploidy Develops into Aneuploidy, Triggering Skin Aging in Phosphovimentin-deficient Mice.2015

    • 著者名/発表者名
      Tanaka H, Goto H, Inoko A, Makihara H, Enomoto A, Horimoto K, Matsuyama M, Kurita K, Izawa I, Inagaki M.
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemical Chemistrry

      巻: 290 ページ: 12984-12998

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.633891.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素Usp8による1次シリアの制御2015

    • 著者名/発表者名
      笠原広介、青木啓将、田中宏樹、清野透、高坂美恵子、福田枝里子、五島直樹、稲垣昌樹
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会・第88回日本生化学会合同大会(BMB2015)
    • 発表場所
      神戸ポートピアアイランド(神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 国際学会
  • [図書] 実験医学増刊:知る・見る・活かす!シグナリング研究2015「一次繊毛を制御するAurora-Aシグナル」2015

    • 著者名/発表者名
      笠原広介、稲垣昌樹
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      羊土社

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公開日: 2017-01-06  

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