計画研究
脊椎動物の神経幹細胞(radial glia)は著しく伸長した形態と上皮極性を持つことから、極性細胞に典型的な非対称分裂(細胞の極性軸と分裂軸が一致による非対称分裂)を行うと考えられてきたが、我々の詳細な解析により、神経発生期の神経幹細胞は、分裂面を回転させるのではなく、多少の揺らぎはあるものの、脳室面に対してほぼ水平に分裂することで、上皮性を保持した神経幹細胞 (radial glia)とbasal側のプロセスを失った神経前駆細胞(あるいは神経細胞)を生むことを明らかにした。神経産生期の幹細胞では、細胞極性と分裂軸の一致による非対称分裂という古典的なモデルが成り立たないことを示しており、その仕組を理解する新たなモデルが求められている。これらのことを踏まえ、(1)細胞分裂時に複製された中心体間の非対称性と、非対称分裂に必要とされるNotch等のシグナル系との関連、(2)中心体に局在する小頭症遺伝子産物の非対称分裂における役割を解析することを目指している。H25年度には、Notchシグナルに必須な小胞輸送系の振舞を発生脳中で、ライブイメージングと組織染色によって、確認することができた。その結果、解析方法の再検討を行う必要も判明した。また、細胞周期の進行に伴って小頭症遺伝子のノックダウンが細胞の振舞にどのような影響を与えるのかを解析した。さらに、脳室帯外神経幹細胞(霊長類等の複雑な脳では主要な幹細胞集団)を多数生み出すモデルマウス(分裂軸異常変異マウス)での小頭症遺伝子欠失の影響をリアルタイムで観察することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
中心体の非対称性と神経幹細胞の自己複製における役割に関して:初年度に購入した、中心体の速い動きを正確に捉える高速共焦点リアルタイムイメージングシステムの最適化を昨年度行った。当初の予定では、リアルタイムイメージングシステムの購入と最適化は初年度に終了していたはずであるが、装置の主要部分の発売の遅れから研究の進行がやや遅れていた。しかし、システムの最適化の完了とともに、今年度、新規に加わった研究員の専門性を生かすことができたため、概ねその遅れが取り戻せている。また、その結果、予想しなかった興味深い観察結果も得られた。
神経幹細胞の非対称分裂における中心体の機能の解析: H25年度に中心体、Notch等の自己複製能の維持に関与するシグナル系、小胞膜系のライブイメージングを可能とする条件を最適化したので、現在、その解析が実行に移されている段階である。その過程で浮上した方法論的な問題点を解消するとともに、今後発達中の脳スライスを用いた詳細な解析を進めて行く。研究員の移動があったが、別の研究メンバーや大学院生が肩代わりすることで、研究が進行するものと期待している。神経幹細胞の分裂モードの遷移:高速ライブイメージングシステムにより、発達中の脳スライスにおける神経幹細胞の細胞分裂、細胞周期の進行がより詳細にイメージングできるようになった。今後、野生型、小頭症原因遺伝子のノックダウン、あるいは、分裂軸の方向が乱れた神経幹細胞において、分裂装置のダイナミズムの解析を進める。正常な神経幹細胞分裂が進行するためには、微小管細胞骨格系とアクチン細胞骨格系の絶妙なバランスが必要であるという示唆を得られており、その実験的検証を行う予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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