研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
24113007
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
広常 真治 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80337526)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 脳・神経細胞 / モータータンパク質 / 細胞内骨格 / 細胞内物質輸送 |
研究概要 |
大脳皮質は、異なる形態と機能をもつ神経細胞が6層からなる層構造をとる。この層構造は、側脳室に面した脳室帯での神経前駆細胞の増殖・分化、さらに目的地までの遊走 (migration)により構築される。我々は、この神経細胞遊走の分子機構解明に焦点を当て研究をしてきた。我々の研究テーマである滑脳症は神経細胞の遊走障害によって起こる中枢神経系の形成不全である。滑脳症は神経細胞の層構造の異常に伴う平坦かつ肥厚した大脳皮質を特徴とし、その60%は染色体17番にあるLIS1のヘテロ変異によって起こる。LIS1は酵母・真菌からヒトまで高度に保存された遺伝子であり、LIS1は細胞質ダイニンの制御因子である中心体タンパク質である。また、LIS1は微小管-細胞質ダイニン-LIS1の複合体を形成させ、アイドリング状態にすることで細胞質ダイニンの順行性の移動に必須である。本年度の研究ではアイドリング状態にある細胞質ダイニンは微小管のプラス端でカーゴへのローディングとともに活性化され微小管マイナス端に向かう動きを再開させる。この過程で低分子量G蛋白質であるRab6がアイドリング状態の細胞質ダイニンからLIS1を遊離させ、モーター活性を再開させることを証明した。さらに、微小管-細胞質ダイニン複合体をキネシンが運ぶ際にアダプタータンパク質となるNUDCのノックアウトマウスを作成した。NUDCノックアウトマウスはホモは胚性致死であり、ヘテロでは神経細胞の遊走障害があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 計画であった細胞質ダイニンにカーゴがローディングするメカニズムとして低分子量G蛋白質であるRab6がアイドリング状態の細胞質ダイニンからLIS1を遊離させ、モーター活性を再開させることを証明した。 2 微小管-細胞質ダイニン複合体をキネシンが運ぶ際にアダプタータンパク質となるNUDCのノックアウトマウスを作成した。NUDCノックアウトマウスはホモは胚性致死であり、ヘテロでは神経細胞の遊走障害があることが分かった。 3 微小管-細胞質ダイニン-LIS1の複合体の形成にかかる微小管は従来同定されているものと異なり:(1)可動性に富んだものである(2)細胞内骨格の微小管より短いにもかかわらず安定に存在するなどの特徴があることが分かってきた。この特殊な機能と形状を持つ微小管(可動性微小管)はチューブリンと特殊な構成因子によって作られるのではないかと仮説を立て、構成因子の探索を行った。その結果、シヌクレインファミリータンパク質が可動性微小管の形成に重要な役割を果たしていることを突き止めた。
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今後の研究の推進方策 |
1 微小管-細胞質ダイニン複合体をキネシンが運ぶ際にアダプタータンパク質となるNUDCのノックアウトマウスを作成した。NUDCノックアウトマウスはホモは胚性致死であり、ヘテロでは神経細胞の遊走障害があることが分かった。このNUDCノックアウトマウスをLIS1ノックアウトマウスやアルファシヌクレインのノックアウトマウスと交配し、表現形を解析することによってこれら遺伝子の機能的な相互作用を明らかにする。 2 siRNAによってシヌクレインファミリーをノックダウンしその際の細胞質ダイニンの順行性の運搬の障害や核周周辺への異常な局在、さらにライソソームやミトコンドリアなどのオルガネラの局在の異常を証明する。また野生型をノックダウンした条件下で変異型のアルファシヌクレインを後根神経節細胞に発現させた群、変異型のみを発現させた後根神経節細胞に発現させた群でLIS1の局在、細胞質ダイニンの運搬、ミトコンドリアやライソソームの移動の異常を比較し、アルファシヌクレインの変異がloss of functionかgain of functionかを明らかにする。
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