計画研究
シロイヌナズナの微小管関連変異株の分子遺伝学・細胞生物学解析,および微小管標識系統のライブセル・イメージング解析により,表層微小管の形成機構や制御因子を明らかにしてきた。特に,微小管再編成に関わるリン酸化シグナル伝達系因子を遺伝学的・生化学的に同定しており,本研究では塩ストレスなどの細胞外刺激に応答した微小管パターンのリン酸化シグナル制御機構を解明する。本年度はシロイヌナズナPropyzamide-Hypersensitive 1 (PHS1)がリン酸化するαチューブリンのセリン残基を同定した。このセリン残基はチューブリン二量体が重合する際に、αチューブリンとβチューブリンが接触する相互作用部位であり、実際にリン酸化により重合が阻害されることをin vivoならびにin vitroの重合アッセイによって証明した。さらに、phs1遺伝子破壊変異株の解析から、塩ストレス、高浸透圧ストレスにより引き起こされる微小管脱重合反応の主要因子がPHS1であることを証明した。こうしたストレスにより植物体の微小管は10分以内に脱重合を開始し、30分後にはほとんどの表層微小管が消失する。その後、1~2時間で再重合がおこり、微小管が再生する。しかし、phs1変異株では微小管の消失がまったく起こらなかった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画どおりに研究が進展し、著名国際誌に論文として発表することができた。
1;PHS1のチューブリンリン酸化活性は通常はPHS1分子内のフォスファターゼにより完全に抑制されているが、塩ストレスや高浸透圧ストレスにより脱抑制され、活性化される。PHS1は特定のMitogen-Activated Protein Kinase (MPK)と相互作用することが報告されているので、PHS1の活性化にMPKが関与しているのかを調べる。2;フォスファターゼ活性のないPHS1分子は植物体においてストレスがなくても恒常的に活性化されていることから、活性化ストレスはフォスファターゼの阻害を解除することに働く可能性がある。塩ストレス感受に働くSnRKキナーゼの多重変異株がこの解除機構に関与するかどうかを調べる。3;塩ストレスや高浸透圧ストレスは間期細胞において表層微小管を脱重合するが、分裂期細胞の微小管(紡錘体微小管など)に対する影響を調べる。4;塩ストレス、高浸透圧ストレス以外に、PHS1を活性化して微小管を脱重合する外的刺激や植物ホルモンなどをスクリーニングする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
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