研究領域 | 植物細胞壁の情報処理システム |
研究課題/領域番号 |
24114004
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
橋本 隆 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (80180826)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 微小管 / 浸透圧ストレス / チューブリン / 植物 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
1)αチューブリンのThr349のリン酸化を特異的に認識する抗体を作製した。この抗体を用いることにより、PHS1依存的なαチューブリンのリン酸化をより簡便に、かつより高感度に検出することが可能になった。 2)PHS1を活性化するシグナル伝達系を解明するために、遺伝子構成がアラビドプシスよりも単純なゼニゴケを実験材料として用いた共同研究を西浜講師・河内教授(京大・生命)と開始した。まず、ゼニゴケにおいて浸透圧ストレスによりαチューブリンがリン酸化されるか、このリン酸化がゼニゴケPHS1依存的かどうかを調べたところ、0.6Mソルビトール高浸透圧処理により5分以内にゼニゴケαチューブリンのThr349がリン酸化され、このリン酸化はゼニゴケPHS1破壊変異株では完全に消失した。 3)ゼニゴケゲノムには3つのMAPキナーゼ遺伝子が存在する。そのうちの、MpMPK2(Cタイプ)とMpMPK3(Dタイプ)の遺伝子破壊株における高浸透圧誘導性αチューブリンのリン酸化を調べたところ、どちらの変異株においてもリン酸化は野生株と変化はなかった。残りのMpMPK1(アラビドプシスA/Bタイプに相当)の遺伝子破壊株は致死であった。 4)PHS1自身のリン酸化アミノ酸残基を同定するために、通常の生育条件および高浸透圧条件で育成させたアラビドプシス植物体からPHS1-GFPを精製して、中神博士(理研)との共同研究でリン酸化部位を同定した。PHS1の多くのセリン残基がリン酸化され、そのうち高浸透圧処理にリン酸化が増大するものは8つあった。これらの単独リン酸化ミミック変異PHS1をアラビドプシス細胞に一過的に発現させたところ、顕著な表層微小管の脱重合は観察されなかった。複数の部位のリン酸化が必要である可能性を検討するために、リン酸化ミミック多重変異PHS1を作製し、それらの効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異的リン酸化抗体を作製することに成功し、ゼニゴケにおけるMPK破壊株の解析も順調に進行している。PHS1自己リン酸化されるアミノ酸残基の同定に関して、計画された実験を行ったが、期待される成果はまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
ゼニゴケMPK1の遺伝子破壊については、条件的遺伝子破壊株の作製を共同研究として進める。PHS1自己リン酸化部位の同定については、in vitroでの自己リン酸化活性を調べ、活性が認められれば、in vitroの実験系を用いて自己リン酸化部位を解析し、同定する。
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