1)大腸菌で発現、精製したPHS1とブタ由来のチューブリンを用い、in vitroリン酸化反応を行ったところ、PHS1はチューブリンおよび自己をリン酸化した。精製リン酸化ペプチド断片のMS/MS解析では、自己リン酸化部位を決定できなかった。また、推定アクティベーション・ループ近傍の複数のSer/Thrを単独でAla置換したが、キナーゼ活性に顕著な影響は与えなかった。野生型PHS1は基本活性をもつが、野生型PHS1のフォスファターゼ処理ならびにフォスファターゼ不活性変異PHS1では顕著なキナーゼ活性の増大が見られた。PHS1フォスファターゼがキナーゼ活性に必須な自己リン酸化アミノ酸残基を脱リン酸化することにより、キナーゼ活性を抑制していると考えられる。 2)各種ストレスで活性化されるAtMPK6(Aタイプ)とAtMPK4(Bタイプ)の野生型および恒常的活性化型の組換えタンパク質を上記反応系に加えたところ、PHS1はMPKによりリン酸化されたが、キナーゼ活性への影響は現時点では認められていない。 3)キナーゼ不活性変異PHS1(脱リン酸化活性はもつ)はリン酸化されたチューブリンを脱リン酸化しないことを明らかにした。 4)淡水性緑藻クラミドモナスにおいてもPHS1依存的に高浸透圧や塩ストレスによりチューブリンがリン酸化されることを明らかにした(福澤教授;京大・生命との共同研究)。水生藻類でPHS1が機能することは、植物の進化と環境応答を考えるうえで、興味深い。 5)水耕栽培したシロイヌナズナ植物体を(ソルビトールではなく)PEGを用いて脱水処理することにより、繰り返しストレス処理実験系を確立した。
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