計画研究
ペクチンメチルエスラーゼ(PME)はペクチンの脱メチル化を触媒する酵素ファミリーで、約60のメンバーから成り、ペクチンの分解またはゲル化の調節に関わると考えられてきたが、個々の機能は未解明であった。このうち、シロイヌナズナPME35が花茎の基部の皮層および維管束組織の一次壁で発現し、一次細胞壁の脱メチルエステル化を通して、花茎に支持強度を与える役割を担うことを実証した。この結果は、一次細胞壁も支持機能に於いて重要な役割を果たしていることを示す点で、従来の一次細胞壁の概念を大きく変える成果と考えられる。また、射場グループとの共同研究で、気孔の孔辺細胞の分化の最終過程を調節する転写因子、SCAP1の同定に成功し、このSCAP1が、孔辺細胞の細胞壁中のペクチンを脱メチルエステル化する酵素PME6の働きなどを制御することにより、開閉機能をもった孔辺細胞を完成させることも突き止めた。イネにおけるキシログルカンおよびβ-(1→3)、(1→4)-グルカンの役割を、それぞれの多糖の分解を触媒するOsXTH19と EGL1酵素の過剰発現体を用いて解析した。細胞壁関連遺伝子群の共発現関係を吟味するにあたり、個々の共発現関係の信頼性を推定する方法がないため、進化的保存性を利用する方法を検討した。まず1対1のオーソログ関係が多い動物において、この手法で個々の共発現信頼性を推定したところ、半数近くの遺伝子の共発現が特に信頼性が高いことが判明した。この結果に基づき、オーソログ関係がより複雑である植物での検討を進めており、シロイヌナズナ共発現の比較対象とするために、双子葉植物であるダイズ、ブドウ、タルウマゴヤシ、ポプラの共発現データを作成し、比較共発現データベースのプロトタイプを構築した。
1: 当初の計画以上に進展している
ペクチンメチルエスラーゼ(PME)の機能の内、茎の花茎におけるPME35および気孔細胞壁の機能に関わるPME6およびその類縁PMEの上流の転写因子の解明は予想以上に重要な成果であった。また、真正双子葉植物の共発現データベースの構築も予想以上に早いペースで伸展している。
・細胞壁の動態の解明: PME35とPME6については極性をもった膜交通の時空間的制御機構、翻訳後の酵素活性化の制御、細胞壁中の局在や選別回収、エンドサイトーシスの制御機構を解明する。・細胞壁再編におけるキシログルカン/XTH系の分子解剖を進める。・イネ科細胞壁再編におけるβ-(1→3)、(1→4)-グルカンとケイ素の役割の解明を進める。・細胞伸長のゆるみと硬化の切り替えに関わる信号系の探索を進める。・真正双子葉植物における個々の共発現データの信頼性を見積もり、共発現データベースATTED-IIに低い信頼性の共発現データをフィルタリングできる機能を追加する。ここで得られた信頼性の高い共発現データに基づく細胞壁関連遺伝子群の機能モジュールを推定し、タンパク質間相互作用データとの関連性について検討する。
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