計画研究
植物細胞壁は典型的な動的複雑系で,その構築・再編や機能制御には膨大な数の酵素群と制御因子が関わる。本研究では,植物細胞壁の分子動態を,発生過程や刺激応答などの時間軸と、組織パターンや細胞極性などの空間軸に沿って解剖することにより,植物細胞壁が多元的な情報処理機能を発揮するメカニズムの解明を目指して研究を進め,以下の成果を得た。1.イネ細胞壁におけるXTH/キシログルカン系の役割を検証するためにイネの組換えXTHタンパク質を作成し,キシログルカンが主要な基質であることを実証した。XTHファミリーの各メンバーの新規な分子機能の解明を目指し,コケ,シロイヌナズナのXTHの組換え体をPichiea内で大量に発現させる系を確立した。2.PME35の分泌過程での活性化メカニズムの解明を目指して,RFPとGFPを,それぞれPro領域のN末,PME領域のC末に融合したタンパク質をエストラジオール誘導性プロモーター下で発現させる実験系を構築した。3.ネナシカズラの茎寄生過程を植物細胞壁の情報処理機能解析のモデル系として確立するために,アメリカネナシカズラ(Cuscuta pentagona)とネナシカズラ(C.japonica)の両種について,種子の採種,栽培,寄生反応時のオミクスを行う為の予備実験を終えた。4.シロイヌナズナの葉肉細胞プロトプラストからの細胞壁を高い頻度で再生する系を開発し,細胞壁再生に関わる遺伝子や外的因子の探索を進める方法を確立した。5.大きな遺伝子ファミリーからなる細胞壁関連遺伝子群を対象にして,高い精度で,遺伝子機能を推定するために,ゲノム情報をもとにする新たな方法で共発現データの改良を行った。また RNAseqデータに基づく遺伝子共発現データの導出を大規模に行うためのパイプラインを作成した。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の研究により明らかにした以下の新知見は,細胞壁の機能構造の構築メカニズムを解明する上でいずれも重要な成果として位置づけられる。(1)キシログルカンの役割が疑問視されているイネ細胞壁におけるXTH/キシログルカン系の役割を検証するためにイネの組換えXTHタンパク質を作成し,キシログルカンが主要な基質であることを実証した。(2)茎寄生植物であるネナシカズラの実験室内での採種までを含めた実験系の確立。(3)葉肉細胞プロトプラストからの細胞壁を高い頻度で再生する系の開発と,それを用いた細胞壁再生系のイメージング手法の確立。
当初の計画は順調に進み,更にネナシカズラや細胞壁再生系について所期以上の成果が得られたので,当初計画に,これらの計画を加えて研究を推進する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (2件)
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