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2014 年度 実績報告書

情報処理空間としての細胞壁高次構造の構築と動態制御

計画研究

研究領域植物細胞壁の情報処理システム
研究課題/領域番号 24114005
研究機関東北大学

研究代表者

西谷 和彦  東北大学, 生命科学研究科, 教授 (60164555)

研究分担者 大林 武  東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50397048)
工藤 光子  立教大学, 理学部, 准教授 (90594078)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワード細胞壁 / 植物 / XTH / beta1,3/1,4グルカン / クチクラ / 倍数体
研究実績の概要

植物細胞壁は典型的な動的複雑系で,その構築・再編や機能制御には膨大な数の酵素群と制御因子が関わる。本研究では,植物細胞壁の分子動態を,発生過程や刺激応答などの時間軸と、組織パターンや細胞極性などの空間軸に沿って解剖することにより,植物細胞壁が多元的な情報処理機能を発揮するメカニズムの解明を目指して解析を進め以下の成果を得た。1.陸上植物のXTHファミリー全般を視野に入れた新規機能の解明を目指して組換え蛋白質の生化学的な解析を進めた。その結果シロイヌナズナのAtXTH3およびヒメツリガネゴケのPpXTH31が,βグルカンを基質とすることを示す予備的結果を得た。2.茎寄生植物の行動と,寄生に伴う道管分化誘導,異種植物間組織融合などにおける細胞壁動態の分子解剖を目指し,組織学的解析と,レーザーマイクロダイセクション法を用いたオミクス解析を,昨年に引き続き進めている。3.シロイヌナズナの2倍体で胚軸の細胞伸長が促進されることを見出した。更に2倍体では,クチクラの機能が変化し,ワックス輸送関連の一連の遺伝子群の発現が低下していることを明らかにした。4.シロイヌナズナの葉肉細胞プロトプラストから細胞壁を高い頻度で再生する系を確立し,セルロース微繊維の動態およびキシログルカンとの相互作用について最近提唱されている細胞壁の生力学ホットスポットモデルを指示する新しい知見が得られた。5.イネ細胞壁内のβ1,3/1,4グルカン含量を低下させた形質転換体を用いて,組織内のケイ素分布がβ1,3/1,4グルカンにより影響を受けることを実証した。6.RNAseqに基づく共発現構築法の改良を進め,低発現量遺伝子について安定して共発現関係が推定できるようになった。また,共発現データの評価を多角化し,既知機能が十分に利用できない非モデル生物種についても,正確な質の評価を可能にした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度得られた以下の成果は,植物細胞壁の分子動態を,発生過程や刺激応答などの時間軸と、組織パターンや細胞極性などの空間軸に沿って解剖するうえで,非常に重要な知見であると考えられる点で,当初の計画以上に伸展していると判断できる。
(1) シロイヌナズナのAtXTH3およびヒメツリガネゴケのPpXTH31が,βグルカンを基質とすることを示し,XTHの機能の概念を変えた。
(2) シロイヌナズナの2倍体で胚軸の細胞伸長が促進されることを見出し,更に2倍体では,クチクラの機能が変化し,ワックス輸送関連の一連の遺伝子群の発現が低下していることを明らかにしたことにより,細胞伸長と倍数性との間のブラックボックスに細胞壁の具体的な構造と機能が関与することを初めて実証した。
(3) シロイヌナズナの葉肉細胞プロトプラストから細胞壁を高い頻度で再生する系を確立し,セルロース微繊維の動態およびキシログルカンとの相互作用について最近提唱されている細胞壁の生力学ホットスポットモデル仮説を指示する新しい知見が初めて得られた。
(4) イネ細胞壁内のβ1,3/1,4グルカンとケイ素が,機能的に相互作用している可能性を初めて実験的に示した。

今後の研究の推進方策

年度内の計画については予想以上の成果が得られたので,次年度以降は,当初の計画研究を前倒しにして推進すると共に,茎寄生などの研究テーマを並行して推進し,領域の研究計画全体の推進を図りたい。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] The matrix polysaccharide (1;3,1;4)-β-D-glucan is involved in silicon-dependent strengthening of rice cell wall2015

    • 著者名/発表者名
      Kido, N., Yokoyama, R., Yamamoto, T., Furukawa, J., Iwai, H., Satoh, S., Nishitani, K.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 56 ページ: 268-276

    • DOI

      10.1093/pcp/pcu162

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An emerging view of plant cell walls as an apoplastic intelligent system.2015

    • 著者名/発表者名
      Nishitani, K., Demura, T.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 56 ページ: 177-179

    • DOI

      10.1093/pcp/pcv001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] COXPRESdb in 2015: coexpression database for animal species by DNA-microarray and RNAseq-based expression data with multiple quality assessment systems.2015

    • 著者名/発表者名
      Okamura, Y., Aoki, Y., Obayashi, T., Tadaka, S., Ito, S., Narise, T., Kinoshita, K.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res.

      巻: 43 ページ: D82-86

    • DOI

      10.1093/nar/gku1163

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Plant and Cell Physiology's 2015 Database Issue.2015

    • 著者名/発表者名
      Ohyanagi H, Obayashi T, Yano K.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 56 ページ: 4-6

    • DOI

      10.1093/pcp/pcu206

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 植物細胞壁の高次構造の構築と再編2015

    • 著者名/発表者名
      横山隆亮,鳴川秀樹,工藤光子,西谷和彦
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 53 ページ: 107-114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The biosynthesis and function of polysaccharide components of the plant cell wall2014

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama, R., Shinohara, N., Asaoka, R., Narukawa, H., Nishitani, K.
    • 雑誌名

      Plant Cell Wall Patterning and Cell Shape

      巻: 48 ページ: 3-34

    • DOI

      10.1002/9781118647363.ch1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] XTH20 and XTH19 regulated by ANAC071 under auxin flow are involved in cell proliferation in incised Arabidopsis inflorescence stems2014

    • 著者名/発表者名
      Pitaksaringkarn, W., Matsuoka, K., Asahina, M., Miura, K., Sage-Ono, K., Ono, M., Yokoyama, R., Nishitani, K., Ishii, T., Iwai, H., Satoh, S.
    • 雑誌名

      Plant Journal

      巻: 80 ページ: 604-614

    • DOI

      10.1111/tpj.12654

    • 査読あり
  • [学会発表] 植物細胞壁の構造と機能2015

    • 著者名/発表者名
      西谷和彦,他
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
    • 招待講演
  • [学会発表] Rethinking of construction and remodeling of the CM/XyG network in the primary cell wall2015

    • 著者名/発表者名
      Nishitani K ,他
    • 学会等名
      Front Lines of Plant Cell Wall Research
    • 発表場所
      奈良・東大寺 総合文化センター
    • 年月日
      2015-03-20 – 2015-03-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 植物プロトプラストの細胞壁再生の時間的・空間的制御機構2015

    • 著者名/発表者名
      横山隆亮,他
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] ペクチン分解酵素過剰発現イネの環境ストレス応答解析2015

    • 著者名/発表者名
      小原崇司,他
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] エンド型キシログルカン転移素/加水分解酵素ファミリーの系統的基部にある PpXTH32 の酵素機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      藤田康平,他
    • 学会等名
      東北植物学会第4回大会
    • 発表場所
      山形大学
    • 年月日
      2014-12-13 – 2014-12-14
  • [学会発表] 葉肉細胞プロトプラストの細胞壁再生系の開発とイメージング解析を利用した細胞壁構築過程の解析2014

    • 著者名/発表者名
      九鬼寛明,他
    • 学会等名
      日本植物学会第78回大会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2014-09-12 – 2014-09-14
  • [学会発表] シロイヌナズナ 4 倍体を用いた細胞サイズ決定メカニズムの解析2014

    • 著者名/発表者名
      鳴川秀樹,他
    • 学会等名
      日本植物学会第78回大会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2014-09-12 – 2014-09-14
  • [学会発表] Role of (1,3;1,4)-beta-D-glucan in rice growth and development2014

    • 著者名/発表者名
      Ryusuke Yokoyama,他
    • 学会等名
      The 5th International Conference on Plant Cell Wall Biology
    • 発表場所
      Queensland, Australia
    • 年月日
      2014-07-27 – 2014-07-31
  • [図書] Atlas of Plant Cell Structure.2014

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama, R., Narukawa, H., Nishitani, K.
    • 総ページ数
      202 (150-151)
    • 出版者
      Spriger.
  • [備考] 東北大学大学院生命科学研究科植物細胞壁機能分野

    • URL

      http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/nishitani_lab/

  • [備考] 新学術領域 植物細胞壁の情報処理システム

    • URL

      https://www.plantcellwall.jp/

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公開日: 2016-06-01   更新日: 2023-03-16  

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