研究領域 | 植物細胞壁の情報処理システム |
研究課題/領域番号 |
24114006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 忍 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70196236)
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研究分担者 |
円谷 陽一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10142233)
小竹 敬久 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20334146)
岩井 宏暁 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30375430)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞壁 / 組織癒合 / ケイ素 / ペクチン / アラビノガラクタン / プロテオグリカン |
研究概要 |
1,組織癒合と器官間相互作用におけるアポプラストの機能:傷ついたシロイヌナズナ花茎の組織癒合過程では,傷の上側に溜まったオーキシンによって誘導されたANAC071転写因子がXTH20/XTH19の遺伝子発現を誘導し,これらのXTHが髄の細胞分裂に必須であることが判明した。また,ケイ素を欠乏させたイネでは,セルロースやリグニンなどの二次細胞壁成分が増加し,SWN等の転写因子の発現を介してそれらの合成に関係する遺伝子の発現が誘導されている可能性が示された。 2,発生・発達過程における細胞壁マトリックス多糖の機能:トマトの器官脱離時の離層において細胞壁の再編がおこり一種のキャップ構造を構築すること,また落花と落果にでは異なる細胞壁再編がなされていることが示された。また,受精直後の初期果実形成において,ペクチンの急速な脱メチルエステル化が果皮で,胚珠においてアラビノガラクタンの蓄積が生じることを示した。UDP-arabinose mutase: UAM3を特異的に発現抑制させたイネでは,1次枝梗数が減少し,葯の形態と花粉の形成に異常が生じており,UAM3が花粉の形成発達や枝梗発達に重要である可能性が示された。 3,細胞間情報分子としてのプロテオグリカンの機能:コムギ由来AGPの糖鎖構造を明らかにした(ケンブリッジ大・Paul Dupree教授との共同研究)。また,AGP特異的に結合するヤリブ試薬のターゲット構造が,AGP糖鎖主鎖のβ-1,3-ガラクタンであることを示した(ケンブリッジ大・Paul Dupree教授,東京工業大学・川内進准教授との共同研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した細胞壁多糖やタンパク質等の機能に関する研究が順調に進展し、8編の研究論文を出版することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1,組織癒合と器官間相互作用におけるアポプラストの機能:Fucosyltransferase(FUT3),Matrix metalloproteinase(MMP),polygalacturonase等の細胞壁関連酵素やLRR-RLKなどの情報伝達因子等の変異体の解析を進め,細胞壁関連遺伝子が癒合に果たす役割を解明する。冬季のポプラの導管液中で顕著に増加するタンパク質や糖質,カルシウム等に関連する遺伝子の発現制御機構および生理機能の解明を進める。 2,発生・発達過程における細胞壁マトリックス多糖の機能:器官脱離時に生じる落花と落果過程における細胞壁構造の違い,および果実軟化過程における組織別の細胞壁構築の違いについて,分子生物学・生化学的に分析を行う。イネの花器官形成に異常が観察されたUAM3,グリシンリッチタンパク質,ペクチンメチル化関連酵素遺伝子のRNAiおよび変異体の解析を進め,細胞壁マトリックス多糖類が発生・発達過程において果たす役割を解明する。 3,細胞間情報分子としてのプロテオグリカンの機能:AGP糖鎖の生理活性:AGP糖鎖の部分構造に相当するオリゴ糖をイネの培養細胞に与え,細胞応答(活性酸素の発生など)を調べる(明治大・渋谷直人教授,奈良先端大・倉田哲也准教授との共同研究)。また,次世代シークエンサーを利用して網羅的な遺伝子発現解析を実施し,AGP糖鎖により特異的に発現が変化する遺伝子を特定する。
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