計画研究
①発生・発達過程における細胞壁マトリックス多糖の機能:アラビノース転移酵素、ペクチンメチル化関連酵素遺伝子は、イネの花器官形成や花粉管ガイダンスに重要であることが示された。細胞壁タンパク質THRGPの変異体では、ラミナジョイントの角度が広がるなどの特長的な異常が観察された。Ca欠乏下のトマト果実では、果皮の側鎖を持つペクチン量の減少に伴い硬度が上昇するなどの変化が観察された。②組織癒合と器官間相互作用におけるアポプラストの機能:シロイヌナズナ切断花茎の組織癒合過程で初期に発現するPlasmodesmal callose binding protein(PDCB)とEXPANSINが、傷の上下で発現し、ジャスモン酸情報伝達変異体やRAP2.6L-SRDX形質転換体で、発現が大きく減少することを見出した。冬季のポプラの導管液中で顕著に増加するタンパク質や糖質に関連するXSP25、XSP24、SWEET、CINの発現に対する環境要因やABAの影響を明らかにした。③細胞間情報分子としてのプロテオグリカンの機能:真菌由来のAGP糖鎖分解酵素をデキサメタゾン(Dex)処理により発現誘導することで人為的にAGP糖鎖を引き起こす系をシロイヌナズナで確立した。この植物では、Dex処理で胚軸成長の著しい抑制が起こり、この時AGP糖鎖が分解されていることと、AGP糖鎖に由来するオリゴ糖が蓄積していることが確認できた。AGP糖鎖の分解が病害応答の誘導やCell wall integrityの攪乱を引き起こす可能性が強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた細胞壁多糖やタンパク質等の動態や機能に関する研究が順調に進展し、7編以上の論文を発表することができたので。
①イネの花器官形成や稔実性に異常が観察されたアラビノース転移酵素、スレオニンリッチタンパク質、ペクチンメチル化関連酵素遺伝子のRNAiおよび変異体について、相補性試験を含めた解析を進める。また、細胞壁に変化が確認されたアラビノフラノシダーゼ、キシロシダーゼ、ペクチン分解酵素過剰発現イネについて、種々の環境ストレス耐性について調査を行う。塩ストレスおよびカルシウム欠乏下のトマト果実成熟過程における細胞壁特性の変化について調査を行う。②シロイヌナズナ花茎の組織癒合過程で、初期に発現する、ジャスモン酸やLAP2.6L-TF等によって制御を受けるPDCB(Callose binding plasmodesmal neck protein)やEXPANSINの発現・タンパク質の動態および変異体の表現型解析を進める。また、癒合後期に発現する MMP (Matrix metalloproteinase)の発現、変異体の表現型およびその標的タンパク質の同定と機能解析を進める。③ガラクタナーゼをDexで発現誘導してAGP糖鎖を分解するとAGP由来オリゴ糖が蓄積して病害応答遺伝子の発現が上昇することがわかった。病害応答の情報伝達には、サリチル酸経路やジャスモン酸経路などが知られる。AGPの糖鎖分解により活性化される病害応答経路を遺伝子発現解析から明らかにする。また、Dex処理した植物で蓄積するAGP由来オリゴ糖を同定し、生理的に重要なAGP糖鎖構造を明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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