計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1:結晶性セルロースの分解性が高い子嚢菌Trichoderma reesei由来Cel7A(TrCel7A)に変異導入をして蛍光色素をラベルするとともに一分子観察を行い,結晶性セルロースに対する吸着定数konおよび脱理定数koffを算出した。本結果はLangmuirに受理された。2:蛍光顕微鏡と高速原子間力顕微鏡で同じ視野を観察する手法の開発に取り組み,蛍光色素でラベルしたTrCel7Aの蛍光-高速原子間力顕微鏡同時一分子観察に成功した。本結果はRev. Sci. Instr.に投稿予定である。3:セルロース分子の自己凝集を可視化するために,セロデキストリン加リン酸分解酵素のリアルタイム観察を高速原子間力顕微鏡によって行った。4:セルロース合成過程を可視化するために,メタノール資化性酵母Pichia pastorisを用いた組換えセルロース合成酵素の発現系構築を試みた。
2: おおむね順調に進展している
セルロース合成酵素の異宿主発現実験において若干の遅れがあったが、すでに遅れを取り戻しており当初の計画通りに研究が進んでいるといえる。
1:セルロース合成酵素の異宿主発現セルロース合成過程を可視化するために,酢酸菌Gluconacetobacter xylinus由来セルロース合成酵素AおよびBをコードする遺伝子をメタノール資化性酵母Pichia pastorisに導入し,組換えセルロース合成酵素によるセルロース合成過程が再現できるかどうかを明らかにする。セルロース合成酵素は細胞内から供給されるUDP-グルコースを基質として合成されると考えられているが,P. pastorisの膜上に生産されたセルロース合成酵素の活性を測ることは難しい。そこでセルロース合成酵素のN末端側に分泌シグナルを入れ,セルロース合成酵素のトポロジーをひっくり返す実験を試みる予定である。特に細菌由来のセルロース合成酵素では,細胞内からのcyclic-di-GMPの供給が必須であると考えられているが,本系を用いるとUDP-グルコースとcyclic-di-GMPを含む反応液にP. pastorisの細胞(プロトプラスト)を懸濁することで,細胞内にセルロース合成ができると考えられることから,新規アッセイ系を確立することができると考えている。2:結晶性セルロースおよびキチン分解酵素のHS-AFMおよび蛍光一分子顕微鏡による解析昨年度の実験によって蛍光ラベルされたセルラーゼおよびキチナーゼの調整と,それらを用いた高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)および蛍光一分子顕微鏡の同時観察に成功している。そこで本年度は,本手法を用いて様々な分解酵素の動的可視化を行っていく予定である。すでにキチン分解性細菌が生産するキチナーゼ2種類,および木材腐朽菌が生産するセルラーゼ4種類の観察を始めている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
Langmuir
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