計画研究
平成27年度も、これまでの研究に引き続き植物細胞壁の生合成および生分解に関わる酵素の取得および可視化に力点を置いた。特にセルロースやヘミセルロースなどの合成酵素の多くは,膜タンパク質であることが知られており、メタノール資化性酵母Pichia patorisなどを用いた異宿主発現系を構築すること自体がチャレンジングな実験であったため、本年度はBrevibacillus choshinensisを用いた発現系に挑戦した。1)植物由来タンパク質の異宿主発現本年度は植物細胞壁の生合成過程で重要な役割を担っていると考えられるエクスパンシンやキシログルカンエンドトランスグルコシダーゼ/トランスフェラーゼ(XTH)など、これまでにあまり異宿主発現の例が無いタンパク質に関して、Pichia pastorisおよびBrevibacillus choshinensisを用いた発現系の構築にチャレンジした。その結果AtEXPA17に関してはP. pastorisからB. choshinensisに発現系を変えることで組換えタンパク質の生産に成功した。また、GxCeSAB、AtCeSA1、PpXTH32、AtXTH3、OsCEBiPに関してはP. pastorisで、OsPMT10およびOsPMT16に関してはB. choshinensisによる発現に成功した。それらに関しては論文や学会などでの発表を行っていく予定である。2)植物細胞壁生分解酵素の可視化26年度から取り組んでいたPcCel45Aの中性子構造解析に成功し、その成果をScience Advancesに公表するとともに、プレスリリースを行った。さらに本成果の一部がギネス世界記録に登録された。現在バクテリアが生産するセルラーゼの挙動解析に関しても、結果を取りまとめている。
1: 当初の計画以上に進展している
研究開始当初は酵素分子の動態解析に利用できる技術が高速原子間力顕微鏡だけであると考えていたが、蛍光顕微鏡を用いた一分子観察や、中性子構造解析によるプロトンリレーのダイナミズムを可視化できたことは、計画以上の成果であったと言える。これらの技術を組み合わせて、研究を遂行していく。
当初の計画項目であった①植物細胞壁成分の自己組織化,②植物細胞壁分解酵素の基質認識を利用した細胞壁の動的可視化に関する研究は引き続き当初の計画通り遂行していく。さらに昨年度追加された計画項目である③メタノール資化性酵母P. pastorisを用いた植物由来タンパク質の異宿主発現系の構築、④様々な細胞壁成分分解酵素の動的可視化に関しても、本領域の研究を推進する上で重要な成果が期待できることから、引き続き研究を推進していく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (3件)
Science Adv.
巻: 1 ページ: e1500263
10.1126/sciadv.1500263
PLOS One
巻: 10 ページ: e0116685
10.1371/journal.pone.0116685
J. Bacteriol.
巻: 197 ページ: 1322-1329
10.1128/JB.02376-14
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/topics/topics_z0107_00008.html
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/newtons-cradle-proton-relay-in-cellulase.html
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2015/20150824-1.html