計画研究
本研究では、植物ホルモンとアレロケミカルの機能を併せ持つテルペノイド化合物であるストリゴラクトンに着目して研究を行う。根で生産されるストリゴラクトンの一部は根圏に分泌され、アーバスキュラー菌根菌との共生シグナルとして働く一方、一部は地上部へ移行し、枝分かれ等を制御するホルモンとして働く。ストリゴラクトンの移動に関する詳細は不明であり、関与する因子はこれまでにほとんど明らかにされていない。本研究では質量分析装置を用いて、生体内のストリゴラクトンおよび関連化合物の分布や移動性を明らかにすることを目的とする。また、ストリゴラクトンの細胞間空間への移行に関わる因子の特定を目指す。前年度の研究により、シトクロムP450酵素であるMAX1が、ストリゴラクトン生合成前駆体であるカーラクトンからカーラクトン酸への変換を触媒する酵素であることを明らかにした。本年度は、カーラクトン酸をカーラクトン酸メチルに変換する酵素を同定した。同酵素はS-アデノシルメチオニン依存的にメチル化を触媒した。また、同酵素の機能を欠損した挿入変異体は枝分かれ過剰性を示した。以上の結果から、カーラクトン酸メチルの生成は、枝分かれの制御に必須であることが示唆された。カーラクトン酸メチルはシロイヌナズナやトマトの道管液中からは検出されなかった。一方、昨年度、道管液中での存在が明らかになったカーラクトン酸のモノヒドロキシ体と推定される新規化合物は、多様な植物種の道管液中に共通して存在することが明らかになった。次に、シロイヌナズナのストリゴラクトン輸送体を探索するため、ABC輸送体ファミリーの挿入変異株を取得し、道管液中のカーラクトン酸モノヒドロキシ体含量が低下した変異体を探索している。また、ストリゴラクトンの根からの分泌を低下させる化合物を、ケミカルライブラリーからスクリーニングしている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、シロイヌナズナにおいて枝分かれ抑制ホルモンの合成に必要なメチル基転移酵素を同定することができた。また、昨年度新たに道管液中に見出されたカーラクトン酸のモノヒドロキシ体が、多くの植物種の道管液中に存在することが明らかになった。この結果は、同化合物が多くの植物種に共通の移動形態である可能性を示唆している。
今後は、道管液中に見出されたカーラクトン酸のモノヒドロキシ体の化学構造の決定を目指す。また、ストリゴラクトン輸送体の探索、およびストリゴラクトンの根からの分泌を阻害するケミカルのスクリーニングを継続して行う。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Plant & Cell Physiology
巻: 56 ページ: 1059-1072
10.1093/pcp/pcv028
http://labo.lifesci.tohoku.ac.jp/biomol/
http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/bioactivemolecules/