計画研究
プラス鎖RNAウイルスは複製複合体を含む膜小胞を形成しその中で複製することが知られているが、そのメカニズムについては不明である。研究代表者脇田はHCVの複製の場である膜小胞(DMV)形成のメカニズムと、HCVRNA翻訳とHCVRNA合成の調整メカニズムについて検討した。NS4B結合膜タンパクとしてPREBを見出した。PREBはCOPIIを介した小胞体輸送に関与するタンパクである。レプリコン細胞内でPREBはNS4Bと結合し、さらに新規産生HCVRNAと共局在した。また、PREBはNS4Bと結合して界面活性剤不溶性分画(DRM)に移行する。HCV複製複合体はDRMに存在する。PREBはHCV複製複合体を含むDMV形成に重要な役割を果たしていると考えられた。竹安分担者は原子間力顕微鏡AFMの技術により各種感染体のゲノム構造と動態を“まるごと”みて明らかにし、感染体ゲノム構造とその発現場としての真核細胞クロマチン/核内構造との相互作用を明らかにすることを目的としている。C型肝炎ウイルスは1本鎖RNAをゲノムとしており、そのゲノムを可視化するために「1本鎖RNAを如何に基板(通常は劈開した雲母片)上に吸着させ」、さらに「1本鎖RNAの本来の高次構造を如何に保つか」といった技術的な課題を解決し、「9Kbの1本鎖HCV RNAの構造解析」を行った。1本鎖RNA (Poly(A)-RNA、18SrRNA、28SrRNA、9kb-HCV genome RNA)は分子内でワトソン・クリック型塩基対を形成し、多くの複雑なループ構造をとるため、RNAの全長を計測することはできない。一方、AFM解析で求めた体積は塩基長に比例することから、「体積測定がRNAを特定する」また「特定の分子内ループの存在はAFM画像から検出できる」ことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
HCVNS4B結合膜タンパクとしてPREBを見出した。HCV感染に伴いin vitroおよびin vivoでPREB発現の増加を認めた。PREBはHCV複製複合体を含む膜小胞の形成・維持に重要な役割を果たしているものと考えられ、HCVの診断や治療の標的として期待できる。また、原子間力顕微鏡を用いた解析ではRNA分子の体積は塩基長に比例することから、「体積測定がRNAを特定する」また「特定の分子内ループの存在はAFM画像から検出できる」ことが分かった。
HCV複製複合体を含む膜小胞の形成・維持機構について詳細に明らかにしていく。また、今後は感染体ゲノム-タンパク質複合体のナノメートルレベルの構造および感染体ゲノムの細胞内動態について領域内研究者と積極的に共同研究を進めたい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 10件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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