計画研究
多くのウイルス感染細胞ではストレス顆粒に類似したRNA/蛋白質凝集体の形成(antiviral stress granule: avSG)が誘導され、そこにウイルスRNAセンサーであるRIG-I like receptors (RLR)が招集されること、その結果、インターフェロン遺伝子活性化が強く促進されることを報告してきた。ウイルス感染細胞ではウイルスの二重鎖RNAがPKRを活性化しその結果avSG誘導が起きるが、RNAヘリカーゼの1つであるDHX36がこのPKRの活性化に重要であることを見出した。すなわちウイルスRNAはDHX36/PKRを活性化し、その結果avSGが誘導され、その中でRLRがウイルスRNAを効率的に感知するという機構が明らかとなった。RLRのシグナルはミトコンドリア上のアダプターであるIPS-1に伝達される。IPS-1の機能ドメインを詳細に解析した結果、RLRとの会合に必要なCARDは自身の凝集体形成に必要であるが、人為的にIPS-1を凝集させた時には不要であること、またシグナル伝達に必須なIPS-1の領域はTRAF結合ドメインであることを明らかにした。従ってIPS-1はCARDを介してRLRのシグナルを受け取り、その結果ミトコンドリア上で凝集し、その凝集したTRAF結合モチーフによってTRAF3, 6がそこに招集されることが下流へのシグナル伝達を引き起こすことが明らかとなった。APOBEC3の機能解析: APOBEC3Bの遺伝子多型が、HIV-1感染の病態進行に及ぼす影響を報告した。APOBEC3Bの分解調節機構の解析として、その分解に必要なE3リガーゼの候補蛋白を同定した。阻害蛋白質であるVifの機能解析: Vifによる細胞周期停止機構の解析により、AMPKによるTP53のSer15のリン酸化が重要であることを示した。また、Vif結合蛋白CBFβとの相互作用に必要な残基としてGlu88、Trp89を同定、報告した。
2: おおむね順調に進展している
自然免疫、内因性免疫に関して新たな成果が得られつつあり、解析の実験系を立ち上げに関してもそれが稼働し始めている。以上、総合的に大きな問題は無く進展していると判断する。
抗ウイルス自然免疫応答の解析。ウイルスセンサーの1つであるMDA5蛋白質と二重鎖RNA複合体をグルタルアルデヒドで固定したものを免疫原としてマウスに免疫を行ない、モノクロ抗体を多数得ている。これらについてウイルス感染細胞で染色を行ない、ウイルス感染時にのみ反応する抗体を選択する。すなわち活性型のMDA5を特異的に認識する抗体の選別を行なう。既に行なった基礎的な解析によって「活性型」のMDA5を認識すると考えられるクローンが含まれることを確認している。そのような抗体が活性化型MDA5を検索するプローブとして用いる事ができるか各種ウイルスを用いて検討する。ウイルス感染細胞には抗ウイルスストレス顆粒(avSG)が誘導される。またウイルスの増殖(ウイルス遺伝子の複製、転写)は細胞内の特定の場で行なわれる。生きた細胞の中でのウイルス増殖複合体、avSG、シグナルアダプター(IPS-1)をモニターする目的でそれぞれを異なる蛍光蛋白質で標識した分子の発現ベクターを作成した。これらの蛋白質は本来の活性を保っている事は既に確認してある。これらの標識蛋白質を培養細胞に安定に発現させる事によって、ウイルス感染によってこれらの細胞内での動態、相互作用の解析を行なう。抗HIV-1宿主因子APOBEC3蛋白とそれに拮抗するHIV-1アクセサリー蛋白Vif の機能制御に関して、以下の研究を遂行する。APOBEC3の発現・分解調節機構:APOBEC3ファミリー蛋白のプロモーター解析、並びの翻訳後修飾としての内在性のユビキチン化調節機構を解析する。Vifによる細胞周期停止機構: 本現象にはVifのE3ユビキチンリガーゼ活性が必要であることを示した。そこで、Vifの新規基質となる分子の同定をめざしプロテオーム解析を行う。CBFβによるVifの安定化機構:CBFβがMDM2によるVifのユビキチン化をいかに制御するかを変異体等を用いて検討する。
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