計画研究
多くのウイルス感染細胞ではストレス顆粒に類似したRNA/蛋白質凝集体の形成(antiviral stress granule: avSG)が誘導され、そこにウイルスRNAセンサーであるRIG-I like receptors (RLR)が招集されること、その結果、インターフェロン遺伝子活性化が強く促進されることを報告してきた。本年度は新たに、RLRであるMDA5のモノクローン抗体を作成した。この抗体は活性化型のMDA5を特異的に認識していると考えられた(投稿準備中)。また、Pumilio1, 2は翻訳制御に関わっている事で同定されたRNA結合タンパク質であるが、ウイルス感染時にRLRであるLGP2のウイルスRNA認識を促進する効果があること、avSGに局在することを明らかにした(論文発表済み)。ウイルス複製複合体、avSG、そしてRLRのシグナルを直接受容するIPS-1(ミトコンドリアに局在)の生細胞でのイメージングの系を立ち上げた。今後これらの時空間での動態を検討する計画である。APOBEC3の機能解析:APOBEC3Bの遺伝子発現機能調節機構としてNFkB p65/p50ヘテロダイマーが重要であることを発見した。分解調節機構としてE3ユビキチンリガーゼRNF125およびSIAH1をAPOBEC3Bの分解を促進する候補因子として同定した。APOBEC3Bを高発現するB細胞株を多数同定し、細胞内で内在性APOBEC3Bのシチジン脱アミノ化活性を定量する系を確立した。Vifの機能解析:HIV-1 VifによるAPOBEC3Gの分解を抑制するような新規低分子化合物を同定し、その詳細な機能を解析し、報告した。CBFβはMDM2依存性HIV-Vif分解に抑制的働くことで、その細胞内蛋白量を維持していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
自然免疫、内因性免疫に関して新たな成果が得られつつあり、解析の実験系を立ち上げており、それらが稼働している。以上、総合的に大きな問題はなく進展していると判断する。
自然免疫 これまでにNewcastle病ウイルスについて、そのウイルス増殖を生細胞でモニターする系を確立した。また同様にストレス顆粒の構成タンパク質であるG3BPに蛍光標識をすることで生細胞でのモニターが可能になった。そこでウイルス感染後の生細胞でのウイルス増殖、ストレス応答の連続観察を行う。併せて固定細胞を経時的に調製し、そこでの遺伝子発現をFISH法によって解析する。新たに得られた活性化特異的な高MDA5抗体を用いて、MDA5が活性化される細胞内の場所を特定する。また生化学的な解析も行うことで、ウイルス感染細胞での時空間的なウイルス/宿主の攻防の解明を行う。内因性免疫 APOBEC3の発現・分解調節機構として、引き続きAPOBEC3ファミリータンパクのプロモーター解析、翻訳後修飾としての内在性ユビキチン化調節機構を解析する。新たに確立したシチジン脱アミノ化酵素活性を定量する系を用いてAPOBEC3Bの酵素活性を阻害する薬剤のスクリーニングを行う。Vifによる細胞周期停止のメカニズムとして、未同定の細胞内因子のユビキチン化が関与しているが、この因子のいくつかの候補分子につき解析中であり、これをさらに進めていく。また、VifはCBFβと優先的に結合することで本来の細胞内パートナーであるRUNXファミリーの転写活性に影響を及ぼすという報告があるが、このRUNX転写活性の調節による細胞周期停止機構を検証する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 6件)
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