計画研究
ポリオウイルスレセプタ-トランスジェニックマウス(PVR-tg)マウスモデルを用いて、III型インターフェロン(IFN)による感染阻止の機構を解析した。III型IFNはI型IFNと異なったIFN、異なった受容体を介して作用し、上皮細胞で主に作用していることが知られている。従ってポリオウイルスの粘膜上皮での感染において防御効果を示すことが期待される。III型IFN受容体を破壊したIFNLR1 KOマウスをPVR-tg マウスと交配し、III型IFN応答を欠損したPVR-tgマウスを作製した。このマウスにポリオウイルスを胃内接種、経鼻接種を行い、マウスの生存率、臓器でのウイルス増殖、IFN応答などを調べた。胃内接種においてはIFNAR1 KOよりもIFNARl-IFNLR1 DKOマウスがより高い死亡率、小腸でのウイルス増殖を示した。しかし、小腸においてはIFN-stimulated gene(ISG)の上昇など明確なIII型IFN応答を確認することができなかった。経鼻接種においては、WTマウスにおいて、ポリオウイルス接種時に呼吸部の上皮細胞においてISGの一つであるMx1の上昇が観察された。WTと比較してIFNLR1 KOは高い死亡率、鼻を含む上愕部でのウイルス増殖をしめした。また、呼吸部円柱上皮はIII型IFN投与によって最もよくIFN応答を示すが、この部位においてIFNLR1 KOマウスのウイルス抗原の検出頻度は上昇した。またISGの誘導はTLR3依存的に上昇することが示された。一方粘膜上皮の感染を経由しない脳内接種や静脈接種時にはWTとIFNLR1 KOにおいて生存率などで顕著な違いは見出されなかった。これらのことからポリオウイルス感染時において、III型IFNは主に上皮細胞においてウイルス増殖を抑制する機能を担っていることが明らかになった。
3: やや遅れている
今年度ポリオウイルスとIII型IFN応答との関係については一定の明確な回答を出すことができた。しかしながらPVRを異所的に発現するPVR Tg55マウスとの比較などの研究課題について、十分な結果を出すことができていない。EV71感染モデルについては、I型IFNが標的組織の選択に重要な役割を果たすことを見いだすことができたが、その詳細なメカニズムに迫ることが不十分である。
ポリオウイルスモデルについては激しい脳炎を起こして死亡するPVR-tg21系統と脳炎で死亡することのないPVR-tg55系統との感染、並びに宿主応答の解析を遂行し、標的組織の決定、感染の進行を制御しているメカニズムの解明を目指す。EV71モデルについてはI型IFN応答発動のメカニズムの解明などをノックアウトマウスを用いて進めることを目標とする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Emerg. Microbes Infect
巻: 3 ページ: e53
10.1038/emi.2014.49
Neuropathology
巻: 35 ページ: 107-121
10.1111/neup.12171
http://www.igakuken.or.jp/neurovirology/