計画研究
ウイルス因子と宿主因子のタンパク質間相互作用ネットワークを明らかとするために、ウイルス側の因子としてインフルエンザウイルスのNonstractural protein NS1(NS1)をHEK293T細胞にタグを付加した形で発現させ、タグに対する抗体で免疫沈降を行い相互作用タンパク質を抽出した。得られた相互作用タンパク質複合体をLC-MS/MSによって解析し相互作用タンパク質の網羅的な同定を行った。次にNS1と同様の方法で宿主側の因子でありウイルスRNA/タンパク質複合体の輸送に関わる因子であるYBX1についてネットワーク解析を行った。その結果、NS1およびYBX1についてそれぞれ約60種類および約80種類のタンパク質が同定された。大部分の既知の相互作用因子のRNA結合因子が同定でき、さらにいくつかの新規相互作用と思われる因子が同定された。また、多くのウイルス種でmiR-199a-3pがウイルス感染・複製を抑制する場合があることが、我々を含めた複数のグループで示されている。そこでヘルペスウイルスのHSV-1を例にとり各種ヒト上皮がん株やglioblastoma株の細胞内のmiR-199a-3p発現量をTuD やmiR-199a の発現ベクターで制御したところ期待通りにHSV-1の複製能は、細胞内のmiR-199a-3p の活性と逆相関することが示された。この過程でmiR-199a-3p活性の抑制能を最適化したTuD分子を作製しこの発現ユニットを搭載したウイルスベクターを作製した。
2: おおむね順調に進展している
ウイルス側因子のNS1および宿主側因子のYBX1について多くの宿主因子との相互作用が同定でき新規と思われる相互作用も同定できた。今後のウイルス感染時の相互作用変化の定量の指標となる情報が収集できたと考えられる。また、miR-199a-3pに対するTuDによる阻害によりHSV-1の複製に3倍程度の活性化が見られた。今後TuD の導入法や、TuDの構造を模したS-TuD 分子の最適化を行なうことにより、この活性化をさらに増強して分子機構の解明につなげたい。
他のウイルス側因子にターゲットを広げてネットワーク解析を行う。また、インフルエンザウイルス等を感染させYBX1等の宿主側因子の相互作用の変化を定量する系の確立を目指す。miRNAに関してはmiR-199a-3pによるウイルス複製の制御の普遍性を調べるために解析の対象ウイルス種を、ヘルペスウイルス以外に、アデノウイルス、インフルエンザウイルスにも広げていく予定である。
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