研究領域 | ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
24115007
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
夏目 徹 独立行政法人産業技術総合研究所, 創薬分子プロファイリング研究センター, 研究センター長 (00357683)
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研究分担者 |
伊庭 英夫 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60111449)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | ウイルス複製 / miRNA / SWI/SNF複合体 / 遺伝子制御ネットワーク / HSV-1 / LC-MS/MS、 / ネットワーク解析 / 定量プロテオミクス |
研究概要 |
本研究では、LC-MS/MSを用いて感染体・宿主ネットワークを捉え、予防・治療薬の新規ターゲットを同定することを目的としている。これまでに同定したウイルス因子であるNS1タンパク質の相互作用因子のうちPCID2およびLENG8をbaitとしてさらに相互作用解析を行い相互作用ネットワークの解析を行った。その結果、mRNAの輸送や安定性に関与する因子との相互作用も認められたことからNS1はウイルスおよび宿主のmRNAの輸送や安定性に関与していることが予想された。また、定量プロテオミクスの手法を用いて代表的な代謝酵素74個のタンパク質量のウイルス感染時の変化の解析を行った。その結果、測定したほぼすべての代謝酵素の発現量が低下しており何らかの制御機構の存在が示唆された。 分担者伊庭の研究目的は、広範なウイルスに対する宿主のコンピデンシーに関する重要な機能を担うと考えられるmiRNAの作用機構を解明することにある。これまでにmiR-199-3pが、その複製能に与える影響を評価してきた。TuDをもちいて、[miR-199a(+),Brm(-)]の発現様式を示すタイプ2細胞のmiR-199a-3pの不活化により、HSV-1の複製が活性化し、反対に[miR-199a(-), Brm(+)]の発現をするタイプ1細胞株にmiR-199a-5p/-3pを強制発現させると、複製能は低下するという成果を得ている。次にType1やType2に特異的に発現する遺伝子群を検索して① Type 1ではCD44, Met, CAV1, CAV2といったタンパク質が特異的に発現し、Type 2では決して発現しない。② この相互排他的な発現様式はこれらの遺伝子がmiR-199a-5p/-3pの標的になっていると同時に、Brm型SWI/SNF複合体をその発現に必要としていることにより支持されていることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルス因子であるNS1からの相互作用解析により宿主側因子のネットワークとウイルス感染による制御機構の存在に関する情報を得ることができた。また、定量プロテオミクスの手法が新たな感染体・宿主ネットワークの解析が可能なプラットフォームとして有効であることを示すことができた。 分担者伊庭は、HSV-1を使用してmiR-199a-3pがもつウイルス複製抑制活性を示した。さらにmiR-199a, Brmが、feed forword loopを形成して、CD44, Met, Caveolin-1等の遺伝子のON, OFFを制御することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られたネットワーク解析の情報をもとに個別の因子について機能解析を進め感染時に同定した新規相互作用因子がどのように機能しているかを他班と共同で検証実験を行う。さらに解析が進めば薬剤の標的となりうる相互作用タンパク質が明らかとなると考えられるため本班の持つin silicoスクリーニングプラットフォームにのせ新規薬剤候補化合物の取得も目指す。さらに、ネットワーク解析および定量プロテオミクス解析のプラットフォームが新たな制御メカニズムの解明に有効であると考えられ、他のウイルスやそれらの構成因子についても広く適用可能と考えられるためこれらの解析を目指す他班にも提供し共同して解析を進めていきたい。 また、研究分担者がもつ特定のmiRNAの阻害剤、TuD/S-TuDと、研究代表者がもつ網羅的なproteome解析を結びつけ、これらの問題点を解決して高い精度でmiRNAの標的をタンパク質レベルで定量していくことを考えている。特に若手インターンシップを活用して、若い研究者が、miRNAと転写制御因子が形成するネットワークの解析法を構築していく環境を整えることにより「感染コンピテンシ」班全体に貢献したい。
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