計画研究
これまでにウイルス側の因子であるインフルエンザウイルスのNonstructural protein NS1(NS1)をbaitとして相互作用解析を行い、PCID2 (PCI domain containing 2)およびLENG8 (leukocyte receptor cluster (LRC) member 8)がmRNAの輸送や安定性に関与することが予想された。そこでこれらの因子のノックダウンを行いインフルエンザウイルスとの関係を調べた。その結果LENG8のノックダウンによりインフルエンザウイルスの増殖と分泌が抑制されることがわかった。逆にPCID2をノックダウンした際にウイルスの増殖が促進される傾向があることがわかった。これらのことからウイルスの増殖や分泌をNS1-PCID2-LENG8のネットワークにおいて制御していることが明らかとなった。また、新規翻訳タンパク質量を定量プロテオミクスの手法を用いて定量するプラットフォームを確立した。分担者伊庭は、これまでにmiR-199a-5p/-3pが幅広いウイルス種の複製を負に制御することに注目して、HSV-1を例にとって、その複製能に与える影響を評価してきた。その結果このmiRNAの作用点はゴルジ装置近傍で見られるウイルスのenvelopmentの段階にあることがわかってきた。ここに関与する可能性のある数種のmiR-199a-5p/-3pの標的遺伝子群のおのおのについて、そのウイルス複製における役割がこれまでの解析から明確になりつつある。
2: おおむね順調に進展している
ウイルス因子であるNS1からの相互作用解析および機能解析により宿主側因子のネットワークとウイルス感染による制御機構の存在に関する情報を得ることができた。また、新規に開発した新規翻訳タンパク質の定量プロテオミクスの手法が新たな感染体・宿主ネットワークの解析が可能なプラットフォームとして有効であることを示すことができた。分担者伊庭はHSV-1を使用してmiR-199a-5p/-3pがもつウイルス複製抑制活性を明らかにし、その作用点が、感染後期のウイルスのenvelopmentの過程にあることを見い出した。このmiRNAの標的の中にこの過程に関与するものがいくつか明らかになってきた。またmiR-199a, Brmが、2種のfeed forword loopを形成して、CD44, Met, Caveolin-1, -2等の遺伝子のON, OFFを強固に制御することを示し、このmiRNAが規定する細胞型の特質も明らかになりつつある。
今回得られたネットワーク解析の情報をもとに個別の因子についてさらに機能解析を進め感染時に同定した新規相互作用因子がどのように機能しているかを他班と共同で検証実験を行う。さらにNS1-PCID2やPCID2-LENG8の相互作用といった新規に明らかとなった相互作用が薬剤の標的となりうるか検証するとともに本班の持つin silicoスクリーニングプラットフォームにのせ新規薬剤候補化合物の取得も目指す。さらに、ネットワーク解析および定量プロテオミクス解析のプラットフォームが新たな制御メカニズムの解明に有効であると考えられ、他のウイルスやそれらの構成因子についても広く適用可能と考えられるためこれらの解析を目指す他班にも提供し共同して解析を進めていきたい。研究分担者がもつ特定のmiRNAの阻害剤、TuD/S-TuDと、研究代表者がもつ網羅的なproteome解析を結びつけ、これまでのmiRNAの標的決定の困難さを解決して、高い精度でmiRNAの標的をタンパク質レベルで定量的に同定していく手法を確立したい。特に若手インターンシップを活用して、若い研究者が、miRNAと転写制御因子が形成するネットワークの解析法を構築していく環境を整えることにより「感染コンピテンシ」班全体に貢献したい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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