研究実績の概要 |
前年度に続き、精神疾患様の行動を示すことが報告されている遺伝子改変マウスについてシナプス関連分子の発現パターンの異常を検索した。今年度は主に統合失調症様の行動を示すDISC1ノックアウトマウス(DISC1 KOマウス)の解析を大脳皮質、海馬、線条体に着目して行った。その結果、腹側線条体(側坐核)において2型ドパミン受容体(DRD2)の発現量の上昇が確認された。この領域におけるDRD2の分布を超解像顕微鏡法であるSTORM法で詳細に解析したところDRD2が5,000 nm2程度の大きさのクラスターを形成することが明らかになった。また、DISC1 KOマウスではDRD2のクラスターの大きさ、数の増加が認められ、DOSC1 KOマウスにおいてDRD2の空間分布にナノスケールの異常が生じていることが明らかになった。また、DIS1 KOマウスで統合失調症様行動の改善が認められている非定型の統合失調症治療薬クロザピンを投与したDISC1 KOマウスにおいてDRD2クラスターの数、大きさが野生型マウスと同等のレベルまで改善されることが分かった。加えて、DISC1 KOマウス側坐核のmedium spiny neuronのスパインの定量を行ったところ、第二分岐より先の樹状突起上のスパインの数の減少が観察された。以上の結果は統合失調症様行動を示す遺伝子改変マウスの線条体側坐核で同定されたDRD2の微細な分布の変容やスパインの特徴が統合失調症における可視化可能かつ定量的な生物学的指標となりうることを示すものである。以上の成果をまとめた投稿論文のとりまとめを行った。
|