計画研究
本研究の目的は、細胞レベル、神経回路レベルで、双極性障害に特異的な病態、すなわちマイクロエンドフェノタイプを明らかにするため、動物モデルおよびiPS細胞由来神経細胞モデルを用いた検討を進めた。反復性うつ状態を示す変異Polgトランスジェニックマウスを用いて、異常ミトコンドリアDNAが蓄積している脳部位を検索し、視床室傍核に最も蓄積していることを見いだした。視床室傍核は、視床の一部で、視床上部と呼ばれる構造の一部であり、セロトニン神経やCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)神経からの投射を受け、扁桃体、側坐核および前部帯状回に線維を送っているなど、感情に関わるほとんどの脳部位とつながりがあることから、有力な候補脳部位であると考えられた。そこで、loxPにより囲まれたstopシグナルの後にTetオペレーターをつないだトランスジーンと、Tetにより破傷風毒素を発現するトランスジーンの両方を持つトランスジェニックマウスの視床室傍核に、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてCreを発現させ、脳部位特異的機能的ノックダウンを行った後、行動解析を行った結果、変異Polgマウスと同様のうつ様エピソードを呈することを見いだした。また、統合失調感情障害双極型に関して不一致な一卵性双生児より、iPS細胞を作成し、これを神経細胞に分化させ、その機能差異を探索した。また、患者iPS細胞由来神経幹細胞をマウスに移植し、そのフェノタイプを観察するための方法について、検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
予定通り双極性障害の候補脳部位を同定することができたため。
今後は、視床室傍核の気分障害における意義について、動物モデルおよび死後脳研究により、更に検討を進めていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Molecular Psychiatry
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