計画研究
精神疾患病態への精神神経免疫相関現象の関与の実態を解明し、精神疾患の診断法や治療法の開発に有用なマイクロエンドフェノタイプを確立するため、昨年度に引き続き下記の研究を進めた。1) 心的外傷性ストレス反応の強度に相関する唾液中のバイオマーカーのスクリーニング結果を、独立した対象者で検証し、バイオマーカーの特定を行った。更に、心的外傷体験を想起させる視覚情報の暴露により変動する生理的指標と相関する血液、唾液中のバイオマーカーの検討を行った。2) 領域内喜田グループとの共同で行っているPTSD モデルマウスの遺伝子発現プロファイル研究に基づいて恐怖記憶の形成と消去に関与しているミクログリアのサイトカイン産生パターンを特定、このミクログリアのサイトカイン産生を制御することで、恐怖記憶の消去を促進することを特定した。更に、この現象を指標とする治療薬開発に着手した。3) 領域内橋本グループ、岩本グループとの共同で行っている胎生期の母体の免疫ストレスによる統合失調症罹患感受性モデルマウス研究により、成長後の行動異常に関与する可能性のあるメチル化異常部位と対応する遺伝子発現異常を特定し、統合失調症死後脳検体で検証を行った。4) 精神疾患罹患感受性との相関が指摘されるドパミンD2受容体やBDNF、OLIG2、ミクログリア機能の要となるCX3CR1多型等の脳構造・機能への影響を特定する研究を行った。また、臨床研究と基礎研究との有機的な統合による新たな精神疾患研究領域の創出を目指して、領域班内でストレスとドパミン信号伝達に関する共同研究を行った他、領域内研究者を東北大学キャンパスに招いての学術講演会、学生・市民向けの精神疾患研究のアウトリサーチ活動等を行った。
2: おおむね順調に進展している
心的外傷性ストレス反応の強度に相関する唾液中のバイオマーカーのスクリーニング結果を、独立した対象者で検証し、候補バイオマーカーの特定を行ったこと。PTSD モデルマウスの遺伝子発現プロファイル研究に基づいて恐怖記憶の形成と消去に関与しているミクログリアのサイトカイン産生パターンを特定、このミクログリアのサイトカイン産生を制御することで、恐怖記憶の消去を促進することを特定したこと。胎生期の母体の免疫ストレスによる統合失調症罹患感受性モデルマウス研究により、成長後の行動異常に関与する可能性のあるメチル化異常部位と対応する遺伝子発現異常を特定したこと。精神疾患罹患感受性との相関が指摘されるドパミンD2受容体やBDNF、OLIG2、ミクログリア機能の要となるCX3CR1多型等の脳構造・機能への影響を特定したこと。また、臨床研究と基礎研究との有機的な統合による新たな精神疾患研究領域の創出を目指して、領域班内で新たな共同研究を行った他、領域内研究者を東北大学キャンパスに招いての学術講演会、学生・市民向けの精神疾患研究のアウトリサーチ活動等を行ったこと等から、おおむね順調に進展していると評価される。
平成28年度は、下記の研究を遂行することで、精神疾患病態への精神神経免疫相関現象の関与の実態を解明し、精神疾患の診断法や治療法の開発に有用なマイクロエンドフェノタイプを確立する。1) 心的外傷体験を想起させる視覚情報の暴露により変動する生理的指標と相関する血液、唾液中のバイオマーカーを特定する。並行して行っているPTSD モデルマウス脳のミクログリアの遺伝子発現プロファイル研究と統合して、末梢の神経免疫現象が心的外傷後ストレス反応の形成に関わるメカニズムの特定を行う。更にミクログリアのサイトカイン産生を制御することで恐怖記憶の消去を促進する現象を指標とする前臨床研究を行う。2) 胎生期の母体の免疫ストレスによる統合失調症罹患感受性モデルマウス研究により、成長後の行動異常に関与する可能性のあるメチル化異常部位と対応する遺伝子発現異常の特定を行い、マイクロエンドフェノタイプとして確立する。3) 主要なミクログリア関連遺伝子多型の脳構造・機能への影響の特定を行い、ミクログリア機能の脳の構造・機能への影響を可視化できるレベルで特定する。領域班内での共同研究を進めるとともに、領域内研究者との学術講演会の開催、学生・市民向けの精神疾患研究のアウトリサーチ活動を重ね、臨床研究と基礎研究との有機的な統合による新たな精神疾患研究領域の普及、定着を図る。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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