研究領域 | マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出 |
研究課題/領域番号 |
24116008
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
喜田 聡 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80301547)
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研究分担者 |
McHugh Thomas 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, その他 (50553731)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 神経科学 / 精神疾患 / PTSD / 恐怖記憶 / 記憶消去 / 記憶固定化 / 記憶再固定化 |
研究実績の概要 |
PTSD治療法開発に向けて、恐怖記憶制御の核となるマイクロエンドフェノタイプの同定とその制御基盤の解明を目指して、恐怖記憶制御回路を細胞・シナプスレベルまで網羅的に可視化し、その性状を生化学・生理学的に解析し、その機能を遺伝学的手法により解析することを試みている。本年度は、恐怖条件付け文脈学習課題を用いて、catFISH法により扁桃体領域におけるfear neuronとextinction neuronの同定に成功した。重要な点として、fear neuronとextinction neuronはそれぞれ独立したニューロン集団として扁桃体に存在することが実証された。さらに、受動的回避反応課題を用いた解析から、想起後の恐怖記憶想起(再固定化)フェーズと、恐怖記憶消去フェーズの間に「恐怖」から「安全(消去)」へ移行させる「スイッチフェーズ」の存在、さらに、この移行を司る「スイッチニューロン」の存在が示唆された。特に、薬理学的解析から、このスイッチニューロンにおけるERKの活性化がフェーズ移行に重要であることが示された。さらに、光遺伝学的手法により、恐怖記憶想起時の海馬活性化及び不活性化の影響を解析し、海馬の不活性化が記憶消去誘導に必要であることを示唆した。以上のように、恐怖想起後の時間経過に伴い、消去が誘導されるメカニズムの一端が初めて明らかとなった。以上の結果に基づいて、AAVウイルスあるいはトレーサーを用いた解析法を習得し、恐怖ニューロン、スイッチニューロン、さらには、消去ニューロンを制御する神経回路の同定を進めた。さらに、in vivoカルシウムイオンイメージングの手法の立ち上げも行った。 環境要因による精神疾患発症のマイクロエンドフェノタイプを同定するために、断眠及びサーカディアンリズム異常等による環境要因の影響の解析を継続し、リズム異常により、cAMP情報伝達経路等の情報伝達経路に異常が生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fear neuronとextinction neuronの同定が進展し、光遺伝学的解析を用いた記憶回路解析が進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
順行性と逆行性トレーサー、GFP発現AAVベクターによる回路解析とcatFISH解析とを併用して、fear neuron, transition neuron、extinction neuronの同定を継続し、恐怖記憶回路と消去回路の実体を明らかにすることを急ぐことが重要である。さらに、これらニューロン集団のトランスクリプトーム解析を継続することで、これら回路の性状を分子レベルでも解析し、回路の特性を明らかにする。さらに、今年度の光遺伝学的手法による解析を、恐怖記憶エングラムセルを標的として行い、個々のニューロン機能を明らかにする。さらに、in vivoカルシウムイメージングにより恐怖記憶想起後に消去が誘導される際のニューロン活性の変化を可視化する。以上の解析から想起後の恐怖記憶制御のメカニズムの解析を行い、本計画研究を完成させる。
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