研究領域 | マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出 |
研究課題/領域番号 |
24116009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 和也 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40342753)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | エピゲノム / トランスポゾン / 体細胞変異 |
研究概要 |
脳神経系細胞のゲノムDNAは、コピー数多型、染色体異数性、転移因子挿入パターン多型、染色体の微小欠失など、様々な体細胞変異が生じていることが知られている。また、環境要因が作用し、DNAメチル化状態などのエピゲノム状態が変動していることが知られている。これらの現象およびその破たんは、脳神経細胞の機能・構造ひいては、高次脳機能に多大な影響を与えると考えられるが、統合失調症などの精神疾患では深く研究されていなかった。本研究計画は精神疾患患者死後脳試料から神経細胞、非神経細胞を単離し、体細胞変異およびエピゲノム解析を行うことを目的としている。 昨年度はトランスポゾンLINE-1のコピー数増大を統合失調症患者神経細胞で認めた。本所見について、神経発達障害動物モデルであるPolyI:C投与マウスおよび、新生仔へのEGF投与マカクモデル双方で検討したところ、この二つのモデルの脳試料でもコピー数の増大を認めた。また、統合失調症を発症した22q11欠失患者から樹立したiPS由来神経細胞においてもコピー数増大を認めた。これらのことから遺伝および環境双方の要因によって神経細胞ゲノムの不安定性が増加すると考えられた。次に、肝臓と脳試料の全ゲノム解析を患者・健常者出行ったところ、LINE-1の新規挿入部位は患者側で顕著な変動を認めた。 一方エピゲノム解析においては、前年度取得した全ゲノムバイサルファイトシークエンス配列の解析を行いつつ、微量DNAでの検討が可能な実験系の構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合失調症患者死後脳においてゲノム配列異常を見出したことにより、脳神経系細胞における体細胞変異という新たな病因・病態仮説を提示した。また、脳試料におけるトランスポゾンレベル上昇は、神経発達障害動物モデルでも再現できたことから、早期環境要因の重要性を明らかにし、また体細胞変異の分子メカニズム解明に向けての道筋ができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルを積極的に採用し、LINE-1挿入の分子メカニズムと病態への関与を明らかにしていく。また、微量脳試料を用い、LINE-1の挿入部位を特異的に検出するような実験系の確立も必要である。一方、現在までの解析で、通常のカバレッジのゲノム解読データでは充分な体細胞変異の検出には不向きであることも明らかになりつつある。先ず小数例でultra deep sequencingを行い、体細胞変異のカタログ化を試みる。 エピゲノム解析については引き続き全ゲノムバイサルファイト解析によるメチル化解析とインフォマティクス解析を行う。また、微量脳試料からの解析系の確立を行っていく。
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