最終年度においては統合失調症モデル動物として、GDNFのTGマウスとEGF投与ラットに焦点をあて、脳内神経回路にどのような変化があるか(マイクロエンドフェノタイプ)を入出力回路の構造異常を解析した。 1)ドパミン神経栄養因子と認知行動変化;恒常的ドパミン神経過活動を提示するであろう、ドパミン神経栄養因子GDNFの過剰発現トランスジェニックマウスのドパミン神経活動と行動変化を解析した。当該マウスの中脳ドパミン神経発火は顕著な亢進を呈したが、線条体でのドパミン合成、含量、放出量は全て低下していた。このマウスでは繰り返し行動や立ち上がり行動が亢進することとは合理的一致を見たものの、プレパルス抑制は異常に低下したことと矛盾を生じている。 2)統合失調症モデルの性情動に関連する超音波発声の異常の解析;思春期以降のEGF投与オスラットは、陽性の超音波(50-80kHz)をメスラットに対し、より頻繁に発することが判明した。しかし、抗精神病薬の慢性投与による陽性・陰性発声の変化は限定的であった。 3)統合失調症モデルの聴覚生理機能の分析とドパミンの影響評価;EGF投与ラットは、聴覚野大脳皮質の生理的反応を脳波測定により解析した。2万ヘルツの音への反応を測定したところ、ON反応強度には顕著な変化は見られなかったが、OFF反応の強度は低下、ピーク時間が遅延していることが判明した。抗精神病薬の慢性投与により、OFFピークの遅延のみ改善した。
|