計画研究
引っ張る反復モータSecDFの作動機構の詳細を明らかにするために、昨年度に引き続いて大腸菌SecDFを対象とした部位特異的 in vivo 光架橋実験を進めた。SecD分子が持つ大きなペリプラズムドメイン内に分泌される基質タンパク質と特異的に相互作用する領域を新たに見い出した。また、このドメイン近くに機能発現に極めて重要なアミノ酸残基を同定した。イオン透過に直接関与するアミノ酸残基を除けば、1アミノ酸残基の置換で機能を大きく変化させる変異としては初めての発見であり、分子メカニズムの理解の上で興味深い。同時に、プロトン駆動力の有無により、SecD-SecFのペリプラズム領域間の相互作用が変化する事を示唆する結果も得ている。産総研佐藤研との共同研究として、高度好熱菌SecDFの電子顕微鏡観察を進め、SecDFが2つの主要な構造状態を取る事を見いだした。我々の作業仮説を支持する結果と考えている。ビブリオ属細菌では、2種類のSecDF分子が存在しており、一方はプロトン駆動型、他方はナトリウム駆動型として機能している事を見いだした。ビブリオ菌中でのこれらSecDFパラログの発現様式機構を解析し、プロトン駆動型のV.SecDF2は、細菌のタンパク質輸送能が低下した際に、特異的に発現されることを見いだした。
3: やや遅れている
本研究の主要な目的の1つとして、SecYE-SecDF 複合体の立体構造解析が挙げられる。この課題の達成の為に、SecYとSecDF 間のインターフェースをin vivo光架橋実験により同定する事が必要であるが、70箇所以上の変異体を用いた解析においても、未だ同定に到っていない。これは、SecYEとSecDFの量比の問題や、膜内環境下での架橋の効率の低下や、脂質等との架橋形成等により上手く架橋産物を補足できていない事が原因と考えられる。今後は、実験システムを改良することにより、この課題を克服したい。
上記問題をクリアするために、SecYE複合体も同時に過剰発現する実験系を新たに構築し、現在その効果を予備的に検討している所である。今後はこの実験系を用いて、早急にSecY-SecDF相互作用面を決定し、構造解析に向けての足がかりとしたい。ビブリオ菌のSecDFパラログの機能解析等から、イオン選択性を異にする2種類のパラログが極めて巧みに使い分けをされている機構が明らかになって来た。これらを材料として、イオン透過機構の分子機構の詳細を明らかにすると共に、これら2種類のパラログの使い分けの機構についても着目して解析を進めたい。東洋大伊藤政博博士との共同研究として、カリウムイオンに依存したSecDFタンパク質の存在の有無についても検討を進める予定である。領域内での新たな共同研究を進めることで、一価カチオン駆動型モータタンパク質研究の新たな一面が見えて来ると期待される。
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J Struct Funct Genomics.
巻: 3 ページ: 107-115
10.1007/s10969-013-9168-4
Nature
巻: 未定 ページ: 未定
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