研究領域 | 運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性 |
研究課題/領域番号 |
24117004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本間 道夫 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50209342)
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研究分担者 |
加藤 貴之 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20423155)
南野 徹 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (20402993)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 運動マシナリー / べん毛 / 電子顕微鏡 / エネルギー変換 / 生体膜超分子 |
研究実績の概要 |
べん毛の根元にあるCリングには回転力発生、回転方向変換そしてべん毛繊維の形成という3つの大事な機能がある。このCリングはFliG、FliM、FliNの3種類のタンパク質から構成される。この中でFliGはそれ自身でリングを形成し、固定子複合体と直接相互作用をする最も大事な部分である。FliGの3残基欠損変異体はSalmonelaやEscherichia coliで回転方向が一方向にロックされたり、べん毛形成しなくなったりすることが知られている。V. alginolyticusにおける相同箇所を欠損させたFliG(ΔPSA)を発現するプラスミドを作製し、その表現型を調べた。べん毛繊維が生えなかったが、Vibrio菌内で野生型と同様に変異体でも極への局在が観察された。極局在したドットの蛍光強度を解析したところ野生型と変異体でほぼ同じことから、欠損変異体もリング構造を保持しているものと考えられた。欠損変異体を発現するプラスミドを野生株VIO5に導入し、染色体から野生型のFliGを、プラスミドから変異体のFliGを発現させた。その結果、べん毛繊維は構築されたのに対し、運動能は大きく抑制された。この結果が一般的な現象かどうか検討するため、べん毛形成できないことが知られている点変異体R179HとA219Eを用い、野生株VIO5にこれらの変異体を発現させたところ欠損変異体と同じような結果を示した。報告されているFliG-FliM複合体の結晶構造から推測すると、今回使用した変異体はFliMとの結合能が失われていると考えられる。これらの変異体FliGはリング構造を保持しているものの、べん毛繊維を構築することができない。しかしながら、リング内にわずかに野生型のFliGがあればべん毛繊維を構築できるようになると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMR、X線結晶構造、電子顕微鏡などにより、現在の最高技術レベルで構造情報を取得し、その情報と回転計測を組み合わせることで、分子間相互作用と力発生機構の解明を目指している。NMRと電子顕微鏡による構造解析は、論文にまとめる一歩手前の状態である。また、結晶構造解析は、ある程度順調に進み、動的な構造解析を論文としてまとめることが出来た。計画に従って、堅実な成果は得られていると思う。一方で、べん毛タンパク質の構造機能相関に関するブレークスルー的な研究成果は得られていない。ただし、世界中で試みられて成功していないべん毛モーター膜タンパク質MotAの結晶が解像度が不十分ではあるが得られているので、ブレークスルーとなる研究のシーズは得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果は順調に得られていると思うが。大きな研究発展にはブレークスルー的な研究の必要性がある。そこで、エネルギー変換の本質に迫るために必要な、膜エネルギー変換タンパク質複合体であるMotABあるいはPomAB複合体の構造や固定子と回転子の相互作用がどこで起こっているかを明らかにする研究に集中する。これまでに少し研究計画が広範囲にわたっていたことを反省し、研究のブレークスルーにつながる研究を重点的に推進する。
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