計画研究
昨年度までに、ATP存在下のS1(ミオシンIIのモータードメイン)とアクチンフィラメントの結合は一過的でありながら、コフィリンの結合を強く阻害することから、S1+ATPによるアクチンフィラメントの構造変化の強い協同性が示唆されていた。本年度は、詳細な高速AFM観察を行ったところ、半分強の部分において、フィラメントの半らせんピッチが8%伸びることが分かったが、ADPやATPgS存在下では、半らせんピッチは全く伸びなかった。このことから、ATP加水分解サイクルを回っているS1のみがアクチンフィラメントの構造変化を起こすことが示された。興味深いことに、筋肉由来のトロポミオシン存在下では、S1+ATPはコフィリン結合を強く阻害したものの、らせんピッチの伸長は起きなかった。この結果は、収縮中の筋肉でアクチンフィラメントのらせんピッチの変化が観察されていないことと符合し、らせんピッチの変化はアクチンフィラメントの機能制御にとって必須ではなく付随的な現象であることを示唆する。平行してRng2とよばれる細胞質分裂に係わるタンパク質のアクチン結合ドメイン(Rng2-CHD)の解析を進めたところ、フィラメント中のアクチンプロトマー14分子にRng2-CHDが1分子しか結合していない状態で、高速non-processiveモーターであるミオシンIIによる運動が50%阻害された。しかしprocessiveモーターであるミオシンVの運動は全く阻害されなかった。他方、蛍光顕微鏡観察から、低濃度ATP存在下のミオシンIIはアクチンフィラメントに協同的に結合してクラスターを形成し、かつ、クラスターがフィラメントの一方向に伸長することがわかった。これらの結果は、アクチンフィラメントの一方向的な協同的構造変化が、高速non-processiveミオシンの運動には必要であることを示唆する。今後は、こうした協同的構造変化の機能は調節的なものなのか、力発生そのものに関与するのかを明らかにしたい。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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