研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
24118002
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山口 雄輝 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (50345360)
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研究分担者 |
田村 智彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50285144)
川内 潤也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (20544498)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 発生・分化 / 生体生命情報学 / 酵素 |
研究実績の概要 |
転写開始後の過程については依然として未解決の課題が数多く残されている。そこで本計画研究では、新しい研究手法の開発・利用を主眼におきつつ以下の4つの課題に取り組んでいる。 課題1:ダイナミクスを解析可能な新規実験アプローチの開発。研究代表者の山口は①時間分解能を持つ改良型ChIP法の開発と、②RNAの新規合成量をゲノムワイドかつ高時間分解能で定量解析する実験系の開発を進めている。①については、テトラサイクリン誘導発現系を用いた予備実験をまず行った。予想どおりこの方法では12時間程度の時間分解能しか得られなかったので、より高い時間分解能を有する系の構築を開始した。②については条件検討を行った。さらに、③Pol II転写複合体の1分子イメージングを十川班と共同で進めており、Pol IIと転写伸長因子NELFの1分子同時観察系を確立した。 課題2:転写サイクルのダイナミクス解析。山口は転写伸長因子DSIF、NELF、Paf1Cについて、順次ノックダウンしてChIP-seqならびにRNA-seq解析を進めた。 課題3:Pol IIのリン酸化サイクルの解明。山口は、リン酸化型CTDの新規相互作用因子の機能解析を行い、同因子がmRNAの品質管理に関与している可能性が示唆された。研究分担者の川内は、Pol II CTD脱リン酸化酵素であるFCP1の脱リン酸化活性欠損型を含む各種変異体を作成し終え、in vivoならびにin vitroでの機能解析を進めている。 課題4:普遍的な転写伸長装置が細胞の運命決定に果たす役割の解明。研究分担者の田村は、転写因子IRF8による血球分化誘導系を用いて、各種修飾ヒストンや転写因子のChIP-seq解析を行い、分化における遺伝子発現調節において転写伸長が重要なステップであることをゲノム規模で明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した4つの研究項目をおおむね消化することができた。また、Diamant, Yamaguchi et al. Cell Reports 2012, Masuda, Tamura et al. Cell Reports 2012, Kurotaki, Tamura et al. Bood, Yasukawa, Kawauchi, et al. Cell Reports 2012といった主要な業績を発表するとができた。
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今後の研究の推進方策 |
課題1:ダイナミクスを解析可能な新規実験アプローチの開発。上記課題に引き続き取り組む。「時間分解能を持つ改良型ChIP法」については、低分子化合物を用いて目的タンパク質の活性を制御する新しいアイディアを研究途中に思いついたので、これを並行して進める。 課題2:転写サイクルのダイナミクス解析。上記課題に引き続き取り組み、ダイナミクス解析を行う上で基盤となる情報を集める。 課題3:Pol IIのリン酸化サイクルの解明。上記課題に引き続き取り組む。リン酸化型CTDの新規相互作用因子はmRNAの品質管理に関係すると考えられ、逆遺伝学的解析で表現型が見えづらいので、マウスES細胞を用いてCRISPR法でノックアウトする方針である。 課題4:普遍的な転写伸長装置が細胞の運命決定に果たす役割の解明。上記課題に引き続き取り組む。その後、系譜特異的な機構と普遍的な伸長制御機構を繋ぐ分子の同定を行う。すなわち、転写伸長の基本的調節因子に対する免疫共沈降法と質量分析によって、転写伸長 (関連) 因子と会合する系譜特異的な分子を同定する。
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