研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
24118005
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
緒方 一博 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90260330)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 転写因子 / X線結晶構造解析 / エンハンソソーム / Runx1 / Ets1 / TCR / LEF1 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子構造レベルでエンハンソソーム形成機構を解析し、細胞シグナル依存的な転写制御機構の解析と基本原理の解明を目指している。本年度は、X線結晶構造解析、各種変異体を用いた機能解析、分子動力学などの計算科学による解析(中村らとの共同研究)およびゲノムワイド解析(松本らとの共同研究)に取り組んだ。 1)X線結晶構造解析によって、TCRαエンハンサー上に形成されるエンハンソソームの形成機構の全容を分子構造レベルで解明することを目指し、LEF1-Runx1-CBFβ-DNA四者複合体および(Runx1-CBFβ)2-Ets1-DNA六者複合体のタンパク質-DNA複合体の結晶を得た。予備的解説実験により、それぞれ3.0および4.0 オングストロームの分解能の反射が得られることを確認した。 2)表面プラズモン共鳴法を用いて、Ets1のリン酸化がEts1自身のDNA結合に与える影響を速度論的に解析した。Ets1のリン酸化によるDNA結合活性の低下が、主にEts1の結合速度定数の低下によって引き起こされることを明らかにした。さらに、Ets1の分子構造に基づいてアミノ酸変異を導入し、リン酸化による速度論的な変化もたらす責任残基をいくつか同定した。 3)Ets1-Runx1-CBFβ-DNA複合体におけるDNAを介したEts1の構造変換機構を解析するため、中村らによって開発された、DNAを含む分子の動力学計算法を用いたin silicoアッセイを試みた。 4)Ets1のリン酸化によるEts1のエンハンサー結合パターンのゲノムワイドな変化を、次世代シークエンサーを用いたChIP-seqによって調べた。 5)ヌクレオソームから転写因子-DNA複合体への変換過程を調べるため、in vitroでのモノヌクレオソーム再構成系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も不確定性の高い実験ステップである結晶化実験がスムーズに進行し、分子構造に基づく機能解析へと展開できている。 ChIP-seqやin vitroでのモノヌクレオソーム再構築系など解析手法の整備が完了し、実践段階に入る準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
TCRエンハンサー複合体の構造機能相関についてはこのまま進める。結晶の分解能を向上させる必要があるが、解析は軌道に乗りつつあるので、他の転写因子-DNA高次複合体についても新たに解析を開始したい。機能解析では、予想に反する結果が出てきており、新たな実験手法による解析に取り組む必要がある。
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備考 |
http://transcriptioncycle.org/ http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~seika/
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