研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
24118006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
十川 久美子 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (20291073)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 1分子イメージング / 転写調節 / 遺伝子 / 発現調節 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、生細胞1分子イメージング観察と定量解析により、転写サイクルの動態観察と転写に関わるタンパク質群の個々の振る舞いや相互作用を、時空間の関数として高精細に定量することを目的としている。独自に開発した薄層斜光照明法を基に、4色同時観察・3次元スキャン対応の1分子蛍光顕微鏡システムの最適化を行い、転写サイクルの複雑な時空間制御の解明を進めた。具体的には、以下のような成果を得た。 (1) 転写開始におけるヌクレオソームリモデンリングの役割解明のために、複合体構成タンパク質について、1分子イメージング解析とFRAP(光褪色後蛍光回復法)を組み合わせた解析を進めた。領域内の原田昌彦らとの共同研究により、構成タンパク質である核内アクチンの可視化を進め、OCT4などの転写因子の発現を活性化することを明らかにした(Biosci.Biotechnol.Biochem. 79, 242-246)。 (2) RNAポリメラーゼのリン酸化セリンに対する蛍光抗体フラグメントを用いて、転写開始型と転写伸長型に対する結合タンパク質の推移を解析した。連携研究者木村宏らとの共同研究により、ヒストンH3のアセチルが転写開始から伸長過程へ促進することを明らかにした(Nature 516, 272-275)。 (3) 核内転写関連タンパク質の動態は、細胞外からの刺激に応答し変化しているために、細胞表面での刺激受容体分子の動態解析も重要な情報である。特に免疫細胞などの浮遊精細胞では、細胞表面分子の本来の動きを維持しながら細胞を観察用のディッシュに保持することが求められる。このために、ガラス支持脂質二重膜を簡便に構築する方法を確立した(Anal.Sci.30, 1103-1106)。この方法により、細胞表面から核内へのシグナル伝達を含めて、核内転写関連タンパク質の刺激応答の詳細な解析が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画であった、1分子定量解析とFRAPによる分子群としての動態解析を統合した解析方法を構築した。1分子定量解析の自動化により、転写関連タンパク質について、変異体の比較、刺激による変化の解析を進めることができた。NELFやDSIFなどの転写伸長因子についても、SNAPタグ定常発現細胞と蛍光色素による1分子レベルでの蛍光標識法を確立し、RNAポリメラーゼとの相互作用解析により転写伸長のダイナミクス解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1分子イメージング解析とRNAポリメラーゼと転写因子の相互作用を中心に、FRAP解析を合わせた統合的解析により、スプライシングやクロマチンリモデリング複合体など、転写調節に関与するタンパク質群を含めて解析を進めていく。領域内共同研究として、転写伸長調節因子NELF(山口)やアクチン関連タンパク質(原田)の解析を進めると同時に、領域外の核内タンパク質専門家を引き続き連携研究者に加えることにより、総合的に転写サイクルの時空間制御解明をめざす。 〔連携研究者〕 東京工業大学・大学院生命理工学研究科 徳永万喜洋 1分子顕微鏡システムおよび定量解析技術開発 東京工業大学・大学院生命理工学研究科 木村宏 リン酸化セリン蛍光抗体Fabによる転写サイクルモニター 熊本大学・発生医学研究所 斉藤典子 核スペックルタンパク質の動態解析
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