研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
24118007
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松本 直通 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80325638)
|
研究分担者 |
三宅 紀子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40523494)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | ゲノム / 発現制御 / 次世代シーケンス |
研究実績の概要 |
新たに導入した半導体シーケンサーIon Protonのシーケンス特性を明らかにするため同じ原理で既に導入済みである小型半導体シーケンサーIon PGMと異なる原理による合成シーケンス法(イルミナ社Miseq)の両者を用いてPCRアンプリコンのシーケンスの比較検討を行った。PGM及びMiSeqのシーケンス精度を詳細に検証するために、ベースコールクオリティの比較を行った。MiSeqはリード全体で平均クオリティスコア30(精度99.9%)以上を保っていたが、PGMはリードポジションの前半で平均クオリティスコア25以上を示し、リードポジション100付近では平均クオリティスコアは20(精度99%)であった。1リードあたりの平均シーケンスクオリティスコアの分散を調べた結果、PGMはクオリティスコア5から30の区間になだらかな台形の分布を示したが、MiSeqはクオリティスコア30以上にシャープな山形の分布を示した。それぞれのシーケンサーではリード長にも異なる傾向が認められた。PGMは想定リード長100 bpに対し60 bpから150 bpにリード長が分布していたが、MiSeqは想定リード長150 bpが正確に読まれていた。これらのシーケンス特性を考慮して解析に供する必要がある。 Chip-seqについては計画班山口グループの田村らのIRF8関連Chip-seqの次世代シーケンス解析をサポートした。 転写サイクルの異常としてCoffin-Siris症候群がSWI/SNF複合体の異常で惹起されることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に導入した半導体シーケンサーIon Protonに関して、そのシーケンス特性の解析を明らかにする目的で既に先行して導入済みのIon PGMを用いて異なる原理(合成シーケンス法)の小型シーケンサーと比較検討したことで、コストの面で今後の解析の主役になることが期待されるIon Protonのシーケンス特性をいち早く明らかにすることが可能となった。 機能的ゲノムアッセイにおいては他の計画班(山口班の田村ら)で行われたChip-seqの次世代シーケンスサポートを行いすでに結果を出すことができている。 転写サイクルの異常が絡む疾患の一つとしてCoffin-Siris症候群がSWI/SNF複合体のサブユニットをコードする遺伝子5つのいずれかの異常で惹起されることを突き止めた。さらに他のヒト疾患における責任遺伝子の病的な意義付けを他の計画班(緒方班)と共同で転写サイクルの異常の観点で意義付けを進めており、おおむね順調な研究の進行具合である。
|
今後の研究の推進方策 |
I.導入した新規次世代シーケンサー(半導体シーケンサー)の解析フローの確立:高出力型半導体シーケンサーIon Protonを導入したので、本シーケンサーにおける、安定的かつ効率的なWetおよびDryの解析方法を確立する。 II.効果的なデータ解析フローの確立(インフォーマティクス解析の改善): ELAND、やMAQ、BWA、Novoalign、市販ソフトウェア等を用いて最も網羅的でsignal/noise(S/N)比の高い解析フローを確立する。各研究者が理解しやすいデータ提示法も考慮する。 III.インデキシング技術の検討:スタンダードタイプとデスクトップタイプのシーケンサー出力の最大の解析効率を引き出すためのインデキシングの応用法を確立する。 IV.転写サイクル機構の異常が関与する疾患の探索:特に転写サイクル機構に関与する関連タンパク質等をコードする遺伝子異常が関与する遺伝性疾患を遺伝子異常と共に探索する。 V.機能的なゲノムアッセイ法を積極的に検討する。
|