計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
発達障害は生物学的要因による中枢神経系の機能障害とみなされてきた。しかし最新の研究では、周産期の異質な経験環境や胎内経験の短縮が、発達障害の発症と関連することが示されつつある。本計画班の最終目標は、「社会的認知」機能に焦点をあてた発達モデルを構築、提唱することにある。とくに「身体感覚(内―外受容)」の個人差に着目し、社会的認知との発達的関連をボトムアップ的に明らかにする。具体的には、以下のアプローチから研究を進めている。1.身体感覚とその発達的評価:満期産児および早産・低出生体重児の比較を主軸に、周産期からの自己身体内-外受容感覚の評価と両者の発達的関連の解明をおこなう。身体外部刺激への感覚と身体内部感覚の両面を、生理反応(心拍・脳波等の神経系、メラトニン等の内分泌系)や行動指標(視線探索や自発運動)から評価する。得られた成果は、医学(B02班)、発達障害当事者(C01班)の観点からも多面的に精査する。2.周産期からの身体感覚の発達を基盤とした社会的認知の予後と「社会性認知発達モデル」の構築:表情や視線等の社会的刺激に対する中枢神経系、内分泌系反応、および心理学的認知課題に対する行動反応を指標とし、生後2年間(6、12、18ヵ月)にわたる社会的認知の予後を縦断的、連続的に精査する。結果はクラスタリング解析し、周産期からの身体内―外受容感覚との発達的関連を明らかにする。生体データをA01、A02班に提供し、シミュレーション等の手法により双方向的に検証を重ね、最終的に社会性認知発達モデルを構築するに至る。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定では、1)平成24年12月までに京都大学医学部附属病院小児科NICUに入院中/外来に定期健診に訪れる早産児、および教育学研究科明和研究室赤ちゃんラボを訪問する満期産児を対象に、生理、心理的アプローチにもとづく社会性認知の発達に関する実験を行うためフィールドを整備し、プレ実験に着手する、2)それらをふまえ、平成25年3月までに本実験を実施し、データを蓄積する予定であった。しかし、平成24年12月までに雇用を予定していた研究協力者の当時所属先の事情により、年度中途で退職し、本研究計画に正式に参加することが困難となった。そのため、予定していたプレ実験、本実験の進行に4か月間の遅延が生じた。そこで、平成25年4月からの当該協力者の雇用開始とともに、プレ実験および本実験にただちに着手した。幸いにも、半年程度時間がかかると思われていたフィールドでの実験実施体制の整備、構築が予想を超えて短期間で終えることができたため、平成25年7月までには前年度計画していた実験計画をすべて遂行することができた。さらに、当初目標としていた以上のデータを蓄積することができた。その成果のいくつかはすでに国際誌論文としてまとめており、まもなく投稿予定である。
平成24年度に予定していたが遅延を余儀なくされていた課題については、平成25年の前半までには遂行することができ、さらには予想を超えるレベルの成果を得ることができた。今後も、フィールドでの調査実施体制を維持するよう努め、研究を予定どおり進めていくことが重要である。ただし、プレ実験の過程で、周産期の児の内受容感覚の評価(乳児自身の心拍をフィードバック刺激(聴覚)として与え、刺激が自己心拍と同期するとき、同期しないときの反応を脳波を指標として評価する)については、その妥当性をもう少し時間をかけて慎重に検討する必要があることが明らかとなってきた。生後まもない児の脳波反応は安定した状態での計測がきわめて困難であること、計測できたとしても個人間の差が大きく、得られたデータを妥当に解析する手法の特定には至っていない。今後、周産期の児の内受容感覚評価については、脳波反応のみに依らず、末梢自律神経系(心拍、皮膚電位等)、内分泌系(オキシトシン、糖質コルチコイド等)など多様な指標を組み合わせながら、妥当な評価系の構築、提案を試みる予定である。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 13件) 図書 (3件) 備考 (4件)
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