研究実績の概要 |
【課題1:満期産児と早期産児の比較による周産期以降の身体感覚と社会的認知機能の発達過程の解明】 満期および修正満期に達した早期産児の自発的啼泣の周波数解析を行ったところ、早期産児の基本周波数は満期産児のそれより高いことを見出し、早期産による自律神経系の調整、とくに副交感神経系による抑制機能の不全可能性を示した(Shinya et al., 2014)。さらに、周産期の安静時の呼吸性心拍変動(HRV)と生後12、18か月時点での標準発達検査スコアとの関係を縦断的に検証したところ、周産期に副交感神経活動が弱い児ほど、生後1年の言語性および社会性領域に発達の遅れがみられた(新屋ほか, 2014, Shinya et al., in prep.)。また,早期産児を対象に修正齢6、9、12、18か月時点で視聴覚統合および社会的注意の評価を行ったところ、一部の児で後者の能力に異質性が認められた(Imafuku et al., 2014, submitted)。 【課題2:「内部モデル」獲得を基盤とする社会的認知の発達過程の解明】 「随伴性検出」および「予測誤差の計算・評価」の二種類の機能に焦点をあてた実験を行った。前者については、他者間の相互作用に含まれる随伴性を独立変数とし、その相互作用を観察する乳児の模倣学習を評価したところ、乳児は随伴的に反応した人物から選択的に模倣学習することがわかった(山本ほか, 2014, Yamamoto et al., in prep., Fukuyama et al., 2014)。後者については、他者との相互作用を運動学的に解析する手法により、他者の運動知覚が自己の運動精度(予測誤差修正)や感度と関連することを実証しつつある(Myowa-Yamakoshi et al., 2013, 西村ほか, 2014, Yoshida et al., in prep)。
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