研究領域 | 構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解- |
研究課題/領域番号 |
24119005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
明和 政子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00372839)
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研究分担者 |
河井 昌彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (00283599)
福島 宏器 関西大学, 社会学部, 准教授 (50611331)
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80543214)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 身体感覚 / 新生児 / 乳児 / 社会的認知 / 発達 / 発達科学 |
研究実績の概要 |
発達障害は生物学的要因による中枢神経系の機能障害とみなされてきた。しかし、最近の研究は、周産期の異質な経験環境や胎内経験の短縮が発達障害の発症と関連することを示唆している。本計画班の最終目的は、社会的認知に焦点をあてた発達モデルを構築、提案することであり、そのアプローチとして「身体感覚(内―外受容)」の個人差に着目、社会的認知との発達的関連をボトムアップ的に明らかにすることであった。 具体的には、昨年度に引き続き、以下の点から実験検証を進めてきた。(1)身体感覚とその発達評価:満期産児および早産・低出生体重児の比較を軸に、周産期からの自己身体内―外受容感覚の評価と、両者の発達的関連の解明を行ってきた。身体外部刺激への感覚と身体内部感覚の両面を、生理反応(心拍変動・脳神経生理反応、内分泌系変動)や行動指標(注視パターンや自発運動)から多面的に評価した。得られた成果とそれに基づいて提案された仮説は、他の計画班のアプロ―チからも検証を重ねた。(2)周産期からの身体感覚の発達を基盤とした社会的認知の予後と「社会的認知モデル」の構築:表情や視線等の社会的刺激に対する中枢神経系、内分泌系反応、および心理学的認知課題から導き出される行動反応を指標とし、生後3年間にわたる社会的認知機能の発達過程を縦断的、連続的に精査した。収集したデータをもとに、周産期からの身体内―外受容感覚との発達的関連を検討した。得られた成果とそれにもとづいて提案された仮説は、他の計画班からのアプローチからも検証を重ねた。本年度はとくに、国際の場での成果発信に注力し、国際学会でのシンポジウム、研究会ワークショップなどを積極的に企画、実施してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度中に予定されていた、本研究課題にかかる国際シンポジウム企画、および国際学会における成果発表が都合により開催延期となったため、平成28年度に実施した。 7月には、「the 31st International Congress of Psychology(ICP)2016」で、「対人関係発達の生物学的基盤」にかんする2つのシンポジウムを海外研究者らと企画、主催した。会場は立ち見がでるほど盛況で、本研究に対する研究者の関心の高まりを実感した。その他、3名の海外研究機関の研究者による講演会とワークショップ、2名の海外研究者を交えた研究会「発達科学の未来」などを開催した。さらに、これまで得た最新の成果発表および当該分野の最先端の情報収集を目的として、「2017 International Congress on Infant Studies(ICIS)」「2017 BudapestCEU Conference on Cognitive Development」に参加することで、繰越予算の要件にみあった計画を十分に遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
国際シンポジウム等の経験を通して、本研究課題が今後取り組むべき課題がより具体化できた。本研究で扱ってきた発達モデルは、(1)胎児~乳幼児期の「ある特定の時期、特定の機能」に焦点をあて、(2)個体内に起こる変化を説明するものであった。今後は、ヒトの発達的変化を長期スケール・連続的に埋める研究、対人関係の文脈においては、実環境で起こる相互作用そのものをとらえる斬新な方法論、相互作用経験が精神発達にどう影響するかを説明しうる発達モデルの提案が求められている。ロボットを介し、マルチモーダルチャンネルで子どもに働きかけたときの相互作用を解析、理解する情報システム提案も有効であると考えている。
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