研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
24120003
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大園 拓哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, グループ長 (40344030)
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研究分担者 |
野方 靖行 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (10371535)
平井 悠司 千歳科学技術大学, 理工学部, 講師 (30598272)
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (40451439)
小林 元康 工学院大学, 先進工学部, 教授 (50323176)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | トライボロジー / 微細構造形成 / ゲル / 付着生物 / 高分子薄膜 |
研究実績の概要 |
平成27年度の計画は、対応する生物学からの知見を得るための調査等に加え、作製した構造のトライボロジー評価を様々な状態に拡張、その構造・可変性の相関を調査、加えて表面材料の海洋付着制御の試みであった。これらに対し以下の検討を行い、最終年度に繋がる成果を得た。 1.自己組織化を利用して作製されたピラー構造を柔らかい基材に埋め込んだシワ構造で、摩擦特性を評価し、構造形成によって接触面積の低下とスリップ現象の小規模化が起こり、その結果、摩擦が15%程度減少することが分かり、摩擦力がスイッチングできる表面を作製に成功した。 2.無電解メッキによりNiPをハニカム表面だけにメッキすることに成功し、その上面をPDMSに包埋、シワの周期制御に成功した。 3.マダシラミの凹凸表面の摩擦と構造との相関性について明らかにした。4.ハイドロゲル表面にシワ構造の作製に成功し、ウェット系での異方的な摩擦を確認し、潤滑層と構造の関係について知見を得た。 5.親水性粘液で被覆された魚類体表を模倣した表面の構築を目指し、ポリアニオンブラシ固定化ポリイミド薄膜を柔軟なPDMS上に調製し、シワ形成を確認し、摩擦特性の評価を開始した。6.親水疎水の微細パターンによる新規な毛管的浸透現象を発見した。 7.付着珪藻等を用いた防汚性能試験を行うための、循環水槽系を構築し、流速を画像解析(粒子捕捉法)で評価する方法を確立し、付着性と流れ場の相関を評価する体制を整えた。8.フジツボ幼生に加え、新たに付着珪藻5種についての培養を可能とし、付着珪藻を用いた防汚性能試験体制を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の成果により、作製した表面構造のトライボロジー評価が着実に進んでおり、特に表面構造の海洋付着制御のための実験系の構築も進み、本年度の目標を概ね達成している。また、班間連携による課題も進み、次年度には具体的な成果として公開できると見込んでいる。最終年度においては、これまで得られた成果を踏まえ、特に中間評価時に指摘された生物機能により目を向けた視点において、具体的な成果をまとめて公開していくことが中心的な課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに静水場では自己組織化微細構造に海洋付着生物の付着抑制効果があることがわかっている。また、自己組織化微細構造であるリンクル構造を生体類似材料であるハイドロゲル表面にも形成させ、動的に変形可能な微細構造の設計と初期的摩擦評価に成功している。さらに、リンクル構造と同時にディンプル構造を有する階層構造を作製できること、そして、耐久性を有するポリイミド表面に海洋生物の粘液模倣高分子を固定化する手法も確立した。従って、これらの技術を組み合わせて利用することで、魚鱗など海洋付着生物が付着しない表面の模倣構造表面が作製できると期待される。現在構築している流水下の生物付着試験をすすめ、生物汚損防止表面の構築に向けた基礎知見を得ることに重点をおいた研究を加速するとともに、新しいトライボロジーの機能材料表面としての応用提案を行っていく予定である。 前述の各系に対応する生物学へのアプローチやその知見の取り入れも十分意識しつつ、これらの課題に取り組み、また最終年度であることを意識し、早期の論文発表、学会発表、特許出願などへの具体的成果創出を目指す。
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