研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
24120005
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
細田 奈麻絵 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (50280954)
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研究分担者 |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
前田 浩孝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20431538)
穂積 篤 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40357950)
浦田 千尋 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40612180)
重藤 暁津 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (70469758)
松尾 保孝 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90374652)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / エレクトのニクス実装 / 昆虫 / 表面 / 接合 / ハイブリッド皮膜 / 放熱 / 自己治癒 |
研究実績の概要 |
本班は、生物の接着機構、自己増幅・自己複製修復機能、動的な組織体形成、放熱機能を技術に取り入れるため、生物学的な分析と要素技術開発を行って来た。本年度はこれまでに得た生物機能のしくみに関する研究結果と前年度までに行った生物規範による要素技術開発を集約し、エレクトロニクス実装への技術移転を試みるため次の研究を実施した。 1)様々な表面を歩ける昆虫の足裏の接着性毛状構造を模倣したセルフアライメントチップ実装への応用:毛状構造は、フォトレジストを利用したsu8の微細加工により太さ5μm長さ40μmの高いアスペクト比の構造を作成した。これにより昆虫の毛状構造と類似したサイズを製作することに成功した。セルフアライメント用の基板はぬれ性の制御をVUV照射で行い照射条件の最適化を行った。PDMS皮膜及び自己治癒型の皮膜のぬれ性の制御に成功した。 2)自己増幅・自己複製修復機能により表面機能を持続させる植物の葉のプラントワックスのしくみを模倣した表面皮膜を開発し実装技術へ応用:これまでに開発した防錆剤であるトリルトリアゾール(TTA)を含有するTTA含有層状ハイブリッド皮膜の防錆剤添加量と基材の腐食抑制作用の相関関係を調査し最適化を図った。また,層状構造の有無が防錆性能に及ぼす効果を調べた。次に,物理的な刺激(クラックや剥離等)により,防錆剤が分泌され,防錆効果が持続する機能(自己修復性)を持つ新しい材料開発に成功した。 3)自己複製・自己増殖機能による微細結線開発を目指し導電性を有する人工核酸系の設計と合成に成功し、その礎となる成果と一般性を有する設計方針の構築に成功した。 4)表面微細形状制御による伝熱制御:表面周期構造を用いることで伝熱制御が可能であることが明らかになった。 5)本研究で発見した昆虫の水中接着機構を技術化する目的で鋳型によりプロトタイプを製作し高い接着強度を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては、おおむね計画通りに進んだ。ただし今後の予定として次世代結線技術としての実効性が高いと期待される研究課題に集中するため、当初計画を見直した。 人工核酸を活用した微細結線についてはエントロピー項を活用した新規導電性を有する人工核酸系の構築ならびに外部刺激応答性人工核酸とのモジュール化による可逆的結線技術構築に資する要素技術開発に成功し、次々世代の超微細分子結線技術として期待できる成果が挙げられたが、本新学術研究の残された期間内で当初目的を達成するため、次世代結線技術としての実効性が高い研究課題に集約するべきとの判断に基づき、来年度以降人工核酸を活用した微細結線開発研究は継続しないこととした。
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今後の研究の推進方策 |
①昆虫の足の可逆的接着性、セルフアライメント技術: 前期の研究成果(ハムシの水中歩行の発見と機構解明)を実装技術に応用するため、昆虫の脚先構造や魚類の吸着デバイス(ウバウオ等)について、系統的なアナロジーの検証(A班と連携)と、形成プロセスの解明(B01-2班と連携)、ナノスーツ法による電子顕微鏡観察(B01-2班と連携)を行い、微細構造と接着性との関係を解明して(B01-4班と連携)、可逆的接着性を持つ「昆虫の脚型配線」を最適化する(細田、重藤)。また、濡れ性の違いや泡を利用した「セルフアライメント技術」を開発する(穂積、浦田、重藤、細田、松尾)。最終的な導電化には導電性粒子を利用し、外部刺激により配線の可逆接着を可能にする「結線技術」を開発する(細田、重藤、松尾)。 ②植物の自己修復や分泌の仕組み、長寿命化、防汚技術: 実装材料にあった防錆剤を用いてハイブリッド皮膜組成の最適化を行う。開発した自己修復型絶縁性防錆皮膜にセルフアライメントのためのパターニング/表面改質を実施する(穂積、浦田)。B01-1班(大園ら)の自己組織化技による微細構造化技術を利用して、ウツボカズラ等を模倣したこれまでにない分泌型防汚表面の開発を実施する(穂積、浦田)。 ③生物の放熱性等、放熱特性の向上:放熱特性を高める設計指針である材料表面の周期的な凹凸構造と類似し、極限環境でも生息している珪藻類の熱特性を調べ、「放熱性に優れた実装基板材料」を開発する(前田)。 これら①~③の要素技術を組み合わせ、エレクトロニクス実装プロセスを確立する(全員)。
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