研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
24120006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 直樹 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30293913)
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研究分担者 |
高梨 琢磨 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 主任研究員 (60399376)
光野 秀文 東京大学, 先端科学技術研究センター, 研究員 (60511855)
奥本 裕 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90152438)
三瀬 和之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90209776)
尾崎 まみこ 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314302)
岩佐 達郎 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00133926)
中村 整 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50217858)
奥田 隆 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫機能研究開発ユニット, 上級研究員 (60414893)
齋藤 正男 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70302239)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 昆虫科学 / 害虫管理 / 生物振動 / フェロモン / 乾燥耐性 / 病害虫耐性 |
研究実績の概要 |
マツノマダラカミキリの行動を制御する振動発生装置を試作し、この装置から振動を与えて摂食阻害と忌避がおこることを室内実験より実証した。10種類のガ類から新たに性フェロモン受容体候補遺伝子を単離した。そのうち2種類の受容体について応答特性解析を実施し、性フェロモン成分に対する応答性を明らかにした。難防除害虫のコナダニ類の後胴体部腺において、動物の酵素としては非常に珍しいΔ12-desaturaseの存在を明らかにした。また、害虫の唾液に対してイネ・ダイズで誘導される代謝物を同定した。ウイルス感受性のインド型品種ハバタキと抵抗性のジャポニカ型品種コシヒカリの間で作成された染色体断片置換系統群の戻し交雑F2集団を用いて、候補遺伝子領域を狭めた。植物保護グループでは、病害虫制御を目指した未開発生物シグナルとなるターゲットが絞り込まれた。 極限生物グループでは、高等生物であるネムリユスリカの幼虫は、ほぼ完全に脱水し無代謝の休眠(クリプトビオシス)をおこなう。この現象は多細胞生物の分化した細胞および組織が長期間(17年以上)、常温での保存が可能であることを実証している。乾燥耐性に優れたネムリユスリカ胚子由来の培養細胞(Pv11)を用いて、常温乾燥保存技術の開発を行なった。Pv11を高濃度のトレハロース溶液で前処理した後に乾燥し、約200日間デシケーターで保管し、再水和したところ、蘇生率が10%未満と低いものの、その後に増殖を開始した. 化学センサグループでは、イモリの匂い物質結合タンパク質の匂い分子結合性を結合部位の改変によって制御し、結合応答をCaイメージングによって検出、匂いセンサーの受容器周辺環境テストのための嗅電図記録の実験系を立ち上げた。アリでは予想通り約400種類の嗅覚受容体タンパク質候補を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性フェロモン受容機構解析については、計画通り複数種類の受容体遺伝子の単離に成功したが、応答特性解析の点でやや遅れている。ウイルス抵抗性に関わるイネ遺伝子のマッピングの進度が予定よりも若干遅い。しかしながら、振動を利用した新しい害虫防除法が開発されつつあるだけでなく、重要課題である「ネムリユスリカ由来培養細胞の常温乾燥保存」を1年目で達成できた。この系は細胞レベルでの乾燥耐性因子の解析を可能にし、最終目標である「乾燥ストレス感受性の昆虫培養細胞への乾燥耐性の付与」に寄与する。環境化学センサーへの生物模倣分子としての匂い物質結合タンパク質と受容体タンパク質については、イモリとアリに由来する注目分子を手中に収めつつ、ほぼ予定通り、イモリで匂い結合の検出と制御の実験を先行させ、アリに応用していく道筋ができた。全体としては、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
他の害虫の振動による防除効果を検証するとともに、性フェロモン受容体の応答特性解析を重点的に進める。また、害虫の唾液でイネ・ダイズに誘導される代謝物の生合成に関わる遺伝子やウイルス抵抗性イネの標的ゲノム領域を決定する。特に抗酸化因子の解析を進め、それを添加することでPv11乾燥培養細胞の再水和直後の蘇生率を高めていく。乾燥ストレス感受性の昆虫培養細胞にネムリユスリカ由来の乾燥耐性因子を付与する実験も進めていく。イモリの匂い物質結合タンパク質の匂い分子の親水環境への分散効率と嗅覚情報伝達効率における寄与を評価する。アリからも受容体タンパク質だけでなく匂い物質結合タンパク質を手に入れ同様な実験を進めていく。
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