計画研究
昆虫-昆虫相互作用グループでは、1)2成分系を利用する他のガ類から新規性フェロモン受容体候補遺伝子を単離した。2)3-4成分系ガ類では、RNAseqの発現量解析により、各性フェロモン受容体候補遺伝子の発現量が異なることを示した。また、多成分分子で構成されるにおいの化学センサ開発を目指した研究においては、3)イモリ由来の匂い分子結合タンパク質(CpLip1)、クロオオアリ由来の化学感覚タンパク質(CSP1)のN,C末端ビオチン化タンパク質の大量発現に成功した。4)クロオオアリのCSPと嗅覚受容体(Or)遺伝子の網羅的同定を完成し、当該感覚子で働く約100種類のOrの絞り込みを行った。これらのOrをそれぞれ擁する100本の受容神経が格納されている当該感覚子において世界で初めて、においセンサ内受容神経ネットワークの存在を示唆する微細立体構造を明らかにした。昆虫/微生物-植物相互グループでは、5)ジャポニカイネに存在するBrome mosaic virus (BMV)抵抗性遺伝子候補の形質転換イネを作製し、1個が標的遺伝子であることを確認した。6)「振動により害虫を防除する方法」で国内および国際特許を取得した。また、センサーの工学的応用の観点から昆虫の振動受容器がサブセルラー構造のみならず、感覚細胞周囲の外液組成において哺乳動物蝸牛の内リンパ液の組成との類似点を持つことを発見した。7)エリシター処理したイネの代謝物からbeta-phenylalanineを同定した。極限環境生物グループでは、8)乾燥耐性能力に優れたネムリユスリカ由来の培養細胞(Pv11)の187日間の常温保温に成功し、その後、技術の改良を加え、保存期間の延長(251日)を達成した。
2: おおむね順調に進展している
1)2成分系ガ類の受容体によるフェロモンブレンドの検出モデルの一般化を目指し、新規対象としたガ類も含めて、フェロモンブレンド検出機構の解明が進んでいる。2)イモリの研究において、人工センサ素子として利用可能なLipやCSPの分子機能や作用の解析等は概ね順調である。3)クロオオアリの研究において見出された受容神経ネットワークは予想外の新発見であったため、多成分においセンサに新たな機能を付与する可能性があるこのサブセルラー構造の解明に集中して取り組み一定の成果を得た。4)イネのBMV抵抗性遺伝子候補を2個に絞り込み、感受性イネに導入し感染実験を行うことで抵抗性遺伝子1個の同定に成功した。5)害虫全般に効果のある周波数帯の検討や振動発生装置の改良を経て、1つの国内特許、2つの国際特許(オーストラリア、米国)が登録された。極限環境生物グループでは、6)ネムリユスリカ由来培養細胞Pv11の 常温保温に関与している遺伝子の数がネムリユスリカ幼虫が乾燥耐性を獲得するために必要な遺伝子の数に比べて圧倒的に少ない事が判明し、培養細胞レベルでの常温保存の実現性の高さが期待される。
昆虫-昆虫相互作用グループでは、2成分系のガ類に対象を絞り、性フェロモン受容体を同定し、2成分系の検出モデルを一般化する。また、生体由来のLipやCSPをFETセンサやSAWセンサに組み込み、性能検査を行う。センサ内受容神経ネットワークについては、3dプリンタ模型やin silicoで機能的構造を再現し、数学、情報科学の専門家と共同して、その作動性を仮想的にテストする。これを、クロオオアリの実センサの作動性と比較しながら再現条件を絞り込むことによって作動原理を突き止める。昆虫/微生物-植物相互グループでは、同定したイネのBMV遺伝子が抵抗性遺伝子であることを更に確定させるために、標的遺伝子に変異を持つイネをTILLING法によって単離する。害虫全般に効果のある振動発生装置の改良に取り組むとともに、昆虫の振動受容器の振動伝達体の形態や物理学的特性を明らかにする。極限環境生物グループでは、培養細胞レベルでの常温保存に関わる重要な因子の解析(昆虫培養細胞に限定せず、植物培養細胞からも学ぶ)とそ れらの乾燥耐性を持たない昆虫由来培養細胞への付与実験を継続していく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (11件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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