研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
24120007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
劉 浩 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40303698)
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研究分担者 |
木戸秋 悟 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (10336018)
小林 剛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40402565)
安藤 規泰 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (70436591)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 生物マルチスケール・メカニクス・システム / 生物規範細胞ミクロメカニクス・システム / 生物規範飛行マクロメカニクス・システム: / バイオミメティクス・デザイン |
研究実績の概要 |
1) 生物マルチスケール・メカニクス・システム: A. 昆虫や取りの羽ばたき翼の変形(動き)のロバストネスを明らかにし、 B.生物流動波という概念を取り入れた生体メカニクスシステムの理論体系化を図った。 2)生物規範細胞ミクロメカニクス・システム: 細胞運動の制御と力覚検知メカニズムのメカノバイオミメティックス(木戸秋・小林)において、電界紡糸と光リソグラフィーハイドロゲル弾性パターニングを組み合わせた新たな三次元パターニングゲルの作製技術を開発し、細胞の機械的接触走性―メカノタクシス―を二次元的および三次元的に制御するメカニカルパターニング材料の開発に成功した。 3)生物規範飛行マクロメカニクス・システム: 飛翔生物柔軟翼のバイオメカニクスとバイオミメティクス:統合力学的解明(劉・安藤・田中)において、昆虫羽ばたき飛行の飛行力学・流体力学・材料力学・飛行制御・運動最適化を統合した生物飛行統合力学シミュレータと、生物飛行と生物規範型飛行ロボット・流体機械の流体力学性能を測定、検証可能な世界トップレベルの回流型超低速風洞とDPIV流体計測システムの開発に成功した。 4)バイオミメティクス・デザイン: A. iPS細胞のフリーダーフリー分散培養(木戸秋)に成功し、B. 高性能流体機械のバイオミメティクス・デザイン(劉・田中)において、高効率・高ロバスト性を有する生物規範型水平軸風車の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物規範細胞ミクロメカニクスシステム、生物規範飛行マクロメカニクスシステム、バイオミメティクスデザインの領域において、それぞれ優れた成果を挙げたと評価できる。今後これらの成果に対して、新学術領域を開拓する新たな研究手法の明記が期待される。また、「波動理論に基づく生物マルチスケールメカニクス」に関しては、その概念のみが述べられているに留まり、今後は、新しいスケーリング法則を導入して、より定量的に記述する理論体系の確立に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)細胞ミクロメカニクス: 細胞の「動き」を制御する原理解明とその細胞培養操作の独自技術を開発する。これまでに独自の弾性率パターニングの技術を用いて2次元ならびに3次元細胞培養材料を開発し、間葉系幹細胞やiPS細胞などの幹細胞の運動の制御とともに、その分化や増殖の制御に成功している。今後は、そのメカニクス原理の解明と実用材料への展開を加速する。(2)生物飛行マクロメカニクス: 生物羽ばたき飛行のマクロスケールのメカニクスとしての空気力学・材料力学・飛行力学・神経制御を統合する統合力学シミュレータを基に、生物羽ばたき飛行制御機序の解明、鳥類の内部形態・羽毛微細構造の進化生物学的及び空気力学的研究、B01-1班との連携による生物の自己組織化微細構造表面に誘導するマイクロスケールのメカニクスに由来する摩擦抵抗低減の表面サブセルラー・サイズ効果の解明、B01-2班との連携による昆虫翼のマクロ形態とマイクロ表面構造におけるマルチスケール・メカニクス効果の解明、ハチドリ規範型人工柔軟翼の創製を実施する。さらに生物翼のサブセルラー・サイズ表面構造の力学的機能情報をA01班に提供し「バイオミメティクス・データベース」での生物規範メカニクス・システム機能要素の構築を行うとともに、細胞メカノバイオマテリアルの創製や昆虫規範型ロボットや流体機械の開発などバイオミメティクス・デザイン指針の創出を目指す。(3)生物マルチスケールメカニクス: 細胞から生物個体にわたる幅広いスケールに共通する生物の「動き」における流動性と波動性に関する新しいスケーリング法則を適用することにより普遍的生物運動原理の確立に取り組み、「生物マルチスケール・メカニクス」という新学理の創出を目指すとともに、生物運動マルチスケール現象に対してサブセルラー・サイズ構造がもたらす力学的効果を明らかにしていく。
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