研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
24120008
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 秀輝 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (10396468)
|
研究分担者 |
小林 秀敏 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10205479)
阿多 誠文 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60192465)
古川 柳蔵 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60420006)
山内 健 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90262477)
|
研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 生物規範 / ライフスタイル・デザイン / テクノロジー・ガバナンス / Bio-TRIZ法 |
研究概要 |
生物規範工学を社会に普及・浸透させていくために、以下のことに取り組んだ。 1)ライフスタイル・デザイン手法およびニーズ/シーズ・マッチング手法の開発:バイオミメティクス分野の成果が社会へ導入され普及することが重要な課題である。本年度は、新たなライフスタイルを描くと同時に、昨年度描いたライフスタイルにオントロジー工学を導入し、描いたライフスタイルに必要な技術要素の抽出、さらに自然界のテクノロジーとのマッチングを行った。 2)Bio-TRIZデータベースの構築およびサブセルラー・サイズ構造多様性のモデル化:バイオミメティック製品の標準化に準じた材料開発を誘導できるデータベースの構築を目的に、革新的問題解決法(TRIZ法)を導入したナノ・マイクロ構造と生物機能の体系化について検討し、技術矛盾を解決する原理として自然界にある原理を情報として入れ込んだのがBio-TRIZを試作した。シリコン基板表面を電気化学反応でエッチングすることで、サブセルラー・サイズの表面構造を形成し、このシリコンを鋳型にして、様々な形状の有機材料について、構造多様性のモデル化を検討した。 3)テクノロジーガバナンスの枠組み作り:PENは生物規範工学のテクノロジーガバナンスのツールとして発展をつづけ、日本の生物規範工学の研究開発を強力に支援していくために不可欠の存在となってきた。具体的には研究開発のアウトリーチ活動の機能を担うと共に、研究開発枠組みにもISO/TC266 Biomimeticsの活動等や、一般市民の生物規範工学に対する意識調査の結果等を周知するなど、円滑な社会との双方向コミュニケーションにより、生物規範工学の研究開発に対する信頼の醸成に貢献してきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ライフスタイル・デザイン手法およびニーズ/シーズ・マッチング手法の開発:バックキャスティング手法により、将来の環境制約下におけるライフスタイルを新たに100個描いた。オントロジー工学をライフスタイルに導入することにより、ライフスタイルの構造を行為分解木として表し、生活者の行為、環境制約や社会問題の解決につながる行為、心の豊かさにつながる行為、モノの機能の明示化をすることができた。これにより、技術要件が示され、自然界の技術を記載した既存のデータベースを検索する際のキーワード抽出が容易になった。また、解決したい点とそれにより生じる不具合を明示化することにより、Bio-TRIZとつなげることも可能となった。 2)Bio-TRIZデータベースの構築およびサブセルラー・サイズ構造多様性のモデル化:革新的問題解決法(TRIZ法)と自然界にある原理の情報を導入したBio-TRIZデータベースの試作に成功した。さらに、Bio-TRIZデータベースを用いて、石田・古川班より提案されたライフスタイルに必要な技術要素を抽出して、自然界の解決策(技術シーズ)を提案するシミュレーションを試行し、その有用性を確認した。また、マイクロロッド構造を付与したシリコーン樹脂を試作しJIS規格に準じた自己洗浄機能評価法により評価し、平板上に比べ2倍以上の洗浄能力を確認した。 3)テクノロジーガバナンスの枠組み作り:PENの一次配信先は1500ポイントまで伸びてきた。また、24年度に公開したポータルサイトPENGINからは、月に15万~18万件のドキュメントがダウンロードされ、生物規範工学のアウトリーチ活動に極めて重要な機能を果たした。これは実際にISO/TC266 Biomimeticsの活動に参画し、その活動をリアルタイムで速報するなど、我々が目指してきた実践的なテクノロジーガバナンスの取組みが軌道に乗ってきたことを端的に示すものである。
|
今後の研究の推進方策 |
心豊かなライフスタイルを実現するためのニーズに関して、さらに50種類のライフスタイルの行為分解木を作成し、ライフスタイルを表現する標準語彙の集約を行う。また、その要素技術のシーズを発掘できるように、50以上の技術要件を抽出し、Bio-TRIZデータベースの機能を拡充する。さらに、Bio-TRIZデータベースからのアウトプット情報を実験的に検証することで、社会科学的な観点から求められるバイオミメティクス製品の標準化における認証機能の可能性について探る。そして、A班バイオミメティクスデータベースと連携し、マッチングするバイオミメティクス技術の最適化の実現可能性の検証を行う。具体的には、Bio-TRIZデータベースの機能の拡充(有用な生物機能情報の抽出と材料設計に欠かせない数学的な解析情報の追記、既存のバイオミメティクス製品に関する特許事例の追記)、心豊かなライフスタイルを実現するための技術問題解決の事例集作成、各ライフスタイルに共通の要素技術を探索できる仕組みの構築と戦略的重点技術開発への応用を行う。100のライフスタイルの行為分解木の精緻化を進め、ニーズシーズがマッチングした行為分解木を構築し、共通性の高い基盤技術が抽出され、社会インプリケーティングを実現する可能性の高いバイオミメティクス技術の戦略的重点技術開発が可能となる。 また、テクノロジーガバナンスの枠組み作り:引き続き社会との双方向コミュニケーションのツールPENによる生物規範工学のテクノロジーガバナンスに積極的に取り組む。PENGINは高機能化・リニューアルのために現在仮公開中である。市民の意識調査に加え、今年は生物規範工学に対する企業の意識調査、ニーズ調査にも取り組み、その結果を国際標準化の活動等に活かしていく。このような活動をとしてグローバルな視点で包括的テクノロジーガバナンスの取組みを展開し、生物規範工学の研究開発とその産業化に貢献する。
|